開業準備の際に色々と頭の中でイメージする事でしょう。
あーしたい!こーしたい!でも、この方が良いかな?まあ、流行に乗るならこっちだな・・・!?。
将来の自分の城を想像し考えるのは、楽しい事です。また、出来るだけ前向きに、絶対成功する気持ちで仕掛けを散りばめて患者さんに来てもらえる様に思考する訳ですが、頭の隅っこに常に置いておかなければいけないブラックボックスが有ります。
それは、考え得る最悪のケースとその場合の対応法です。これを、リスクヘッジとも言い、経営者(院長)には必要な事です。 or
これは、歯科医院の開業に限った話では有りませんで、一人の患者さんの治療中も常にチラッと考えて、さっと整理する訓練をしておく必要があると思っています。
実は、日常生活でもこれが自然に出来る人と出来ない人に分かれます。
出来ない人は、訓練で改善出来れば良いのですが、人は誰でも向き不向きがありますので、自分を訓練するよりもリスクヘッジが出来る人と組む方が得策かと思います。
(ハッキリ申しますと、出来ない人が出来るようになるのには何十年もかかると思います。それより、出来ない人は別の長所が必ず有りますから、そちらを生かした方が良いと私は考えます。有名な方だと、世界のHONDAを造った天才技術者の本田宗一郎社長と経営の藤沢武夫副社長という名コンビが思いあたります。)
では、最悪のケースについて日常での例えですが、私は大学時代硬式野球部の内野手でした。
この時に私は、「常に最悪のパターンを想定する事」を学びました。
では、あなたが試合で内野の守備についたと思って下さい。
最悪の打球とは、私の場合は「打者がフルスイングし、金属バットの芯で捉えた130~150km/hの弾丸ライナーが自分の正面(ちょっとずれてれば良いのですが、真正面はかえって難しい)手前1mでワンバウンド、しかもタイミングが取りづらいハーフバウンドで、自分の顔面めがけて飛んでくる。しかも、よりによってグラウンドの凹凸によりワンバウンドした際に、イレギュラーをして打球の軌道が目の前1mで急に変化した打球」です。瞬時にグラブを動かさないと、ボールが眼球にヒットです!
私は、常にこの打球が来ると想定し、それでも捕球できるイメージトレーニングを繰り返しました。そして、自信を持ち気合いを入れ準備をして構えていました。
実際、硬式ボールは非常に硬く危険を伴います。
目にあたれば失明や視力低下の可能性が、口に当たれば歯が破折し口唇裂傷。鼻に当たれば、鼻骨骨折+鼻血ぶー。頬に当たれば、頬骨弓骨折の可能性があります。
それらに対する恐怖心は、打者に対する闘争心で打ち消します。「なんだ、このやろー!」
野球は、ボールを間に介在させた喧嘩だと思い、(これは、私が勝手に思っていただけです。)攻めの守備をすれば良いのです。
一球、一球・・・約2時間ですから、疲れますが慣れると息の抜きどころも解ってきます。
そして、この最悪の打球を常に待っていると、実際飛んでくるのはイメージよりか幾分易しい打球ですから、余裕を持って体が反応してくれます。 ラッキー
ここで話を歯科に戻して、例えば上顎6番残根の抜歯中ならば、根尖部が上顎洞内に迷入したらどうするか?等と考えます。
まず良く根を探して・・・洞との交通を調べて・・・交通してれば、たぶん迷入させたと考えて・・・レントゲンで確認してみて・・・抜歯窩の付近にあるかどうか調べ・・・取れるなら抜歯窩を拡大するか、それとも犬歯窩から取る?・・・自分で無理そうなら近所の病院歯科へ依頼する? etc...と考えるとします。
もちろん、その前に落とさない様に気をつけるのですが、落としたらどう対応してどの様に患者さんに説明をするのかを、抜歯しながらさっさと考える訳です。(たぶん、これは皆さん既に自然にやられていると思います。わざわざ意識はしていないかもしれませんが。 )
同様に、開業でも「考え得る最悪のケース」を考えたくなくてもチラッと考え、頭の隅に置いておくことが大切です。
これは例えが凄く難しい話で、それぞれの医院の立地条件やスタッフの構成、ローンの額等でリスクがそれぞれの医院で全く異なるのですが、思いあたる順に書いてみます。
例:
●内覧会で・・・
天気が嵐だ・天気が良いのに誰も来ない・ディーラー担当者も来ない・スタッフも来ない・お祝いの花も来ない・建築屋さんが倒産して完成していない・雨漏りして居る・電源が入らない・ガスも使えない・近所の歯科医院の院長が怒鳴りこんできた・いきなり汚された・いきなり壊された・火事になった・図面と違う事に気付いた・なんか狭い・なんか臭い・なんか暗い・なんかダサい等
●開業初日に・・・
誰も来ない・大量の患者さんが押し寄せて来た・レントゲンが動かない・チェアーも動かない・スタッフも動かない・患者がヤクザばっかり・表で右翼の街宣車が怒鳴ってる・玄関に動物の死骸などの嫌がらせ・うその予約電話が掛かってくる・スタッフが1日で辞めた・裏の川が増水して床上浸水・裏の山が崩れて埋まった・地震で潰れた・車が突っ込んできた・大家さんが半年後に出てけと言いだした・嫌なら家賃倍払えと言いだした・会計事務所が仕事しない・看板がもう落ちた・薬買うの忘れてた・いきなり患者さんとトラぶった・機械室がうるさいと近所からクレームが来た・患者さんが近所の歯科医だ(偵察)・セクハラされた・セクハラしたと言ってきた・もうゴキブリが居る等
以上、どうでも良い事からかなり深刻な事態まで、滅茶苦茶適当に書きましたが、実はこれらの内の幾つかは、実際に私の知り合いの病院等で起きた事なのです。
とりあえず、それに対応できれば良い訳ですから、頭の中でシュミレーションして問題解決の方法を考えていけばよいのです。
保険の備えは万全かな?人員が不足したらすぐに補充できる家族や知り合いは居るかな?自然災害は何が一番可能性が高いかな?運転資金(修繕用資金)は十分確保してあるかな?世界的経済危機に対する対策は十分かな?スタッフと機械の動作チェックは万全かな?NTTに災害時優先電話の登録はしたかな?強盗が来たときのマニュアルは出来ているかな?・・・等いっぱい有りますが、心配ばかりして暗い顔では患者さんは逃げて行きます。
これらは、リスクヘッジとして必要だけど基本は明るく前向きな医院を構築致しましょ~ がんばろ~!
以上「最悪のケース」のお話でした。
長くなり、スミマセン。m(_ _)m