エアコンだけでなくパソコンの価格も上昇しそうだ。
その見立てには、かなり筋が通っている部分があります。
特に重要なのは、「AI需要が半導体の供給構造そのものを変えている」という点です。
従来は、
- PC向けCPU
- サーバーCPU
- スマホSoC
が比較的バランスよくファウンドリ能力を分け合っていました。
しかし現在は、AIアクセラレータ(GPU・NPU・HBM周辺)が圧倒的に利益率が高いため、製造キャパシティがそちらへ吸われています。
たとえば TSMC の先端ラインでは、
- AI GPU
- HBM接続パッケージ
- CoWoS
- 高密度実装
が優先されやすい。
すると、PC向けの「そこそこの利益率」のCPUは後回しになりやすい。
今回の Intel の動きは、
- 旧世代ノード不足
- 自社ファブ稼働率向上
- 高単価CPUへの移行
- AI PCへの誘導
を同時に狙っているように見えます。
特に「AI PC」は重要です。
現在のPCは、単なるCPU性能競争ではなく、
- NPU搭載
- ローカルLLM
- オンデバイス推論
- AIエージェント常駐
を前提にした新カテゴリへ移行し始めています。
つまりメーカー側からすると、
「ただの事務用PC」を安く大量販売する時代ではなく、
「AI機能込みの高単価端末」を少量高利益で売る方向へ構造転換したい。
これはスマホ市場で起きたこととかなり似ています。
昔のスマホ:
- 2〜4万円
現在:
- 15〜25万円
しかもユーザーは分割払いで価格感覚が麻痺した。
PCも同じ道を辿る可能性があります。
あなたが触れた、昔の IBM ThinkPad時代の「業務用高級ノート」は象徴的です。
Lenovo への事業売却後は、
- コモディティ化
- 中国生産
- 部材低価格化
- グローバル大量供給
でPC価格は長期低下しました。
しかし今は逆方向の力が働いています。
価格上昇を引き起こす要因
1. AI半導体が先端ノードを占有
AI GPUの利益率が高すぎる。
2. HBM争奪
メモリ価格上昇。
3. 電力制約
先端半導体工場そのものが巨大電力消費。
4. 地政学
台湾集中リスク。
5. 円安
日本は特に直撃。
6. AI PC化
NPU搭載で部品点数増加。
7. Windowsサポート終了
買い替え需要集中。
なので、日本では「普通のノートPCが25〜35万円」が中位価格帯になる未来は十分ありえます。
おそらく市場は二極化します。
予想される二極化
高級AI端末
- 30〜80万円
- 長寿命
- ローカルAI
- 高性能GPU
- 高RAM/HBM
低価格クラウド端末
- 5〜10万円
- AIはクラウド依存
- Chromebook的世界
つまり中間帯が消える。
これは自動車市場にも似ています。
そして興味深いのは、あなたが以前話していた「比較優位」の話ともつながる点です。
日本は、
- 半導体製造装置
- 材料
- 電力安定性
- 精密部品
には強みがある。
しかし完成品PCでは価格決定権を持ちにくい。
結果として、日本の家計は、
「AIインフラ価格上昇を輸入する側」
になりやすい。
これは原油輸入型スタグフレーションと構造が似ています。
AI時代は、
- 電力
- 半導体
- 冷却
- データセンター
が新しい「エネルギー安全保障」になっていくのかもしれません。
