成功体験というものは、
ときに人の判断を狂わせる。

この間、ポルトガルへ行った。

ポルトガルといえば、
イワシの缶詰が有名らしい。

実際、空港にも
めちゃくちゃかわいい缶詰のお店があって、
色とりどりの缶がずらーっと並んでいる。

もはや缶詰というより、雑貨。

あまりのかわいさに、
もちろん買って帰った。




そして帰国後。


そのイワシ缶を使ってスープを作ってみた。

これが、

めっちゃくちゃ美味しかった。

イワシの旨みがスープに出て、
「え? 私、料理うまくない?」
と思うほどの出来だった。

そして私は、
ここでひとつの成功体験を手に入れた。

イワシ缶は、汁物に入れるとうまい。

完全にそう思い込んだ。

そして、今日。

家にイワシの煮魚の缶詰があった。

味噌汁を作りながら、
私は何の迷いもなく思った。

「これ入れたら、絶対うまいやん。」

ポルトガルで成功している。

一度、結果を出している。

私には実績がある。

そして私は、
イワシの煮魚缶を味噌汁へ投入した。

グツグツ。

いいんじゃない?

なんならちょっと、
料理上級者っぽいんじゃない?

そして、一口。

……

生臭い。

びっくりするほど、生臭い。

もう一口、飲んでみる。

やっぱり生臭い。

味噌汁の中に、
イワシの生臭さだけが見事に広がっている。

味噌の風味も、
出汁の旨みも、
すべてを押しのけて、

イワシ。

圧倒的イワシ。

そこでようやく気づいた。

ポルトガルで買ったイワシ缶と、
今日そこにあったイワシの煮魚缶は、

別物である。

当たり前である。

でも人は、
一度うまくいくと、
なぜか次もうまくいくと思う。

しかも私は、
「イワシ缶」という共通点だけで、
勝手に成功体験を横展開した。

成功体験というものは恐ろしい。

失敗したことには慎重になるのに、
成功したことには、
びっくりするほど大胆になる。

そして今日、
私はひとつ悟った。

過去の成功は、今日の成功を保証しない。

……などと、
それらしいことを言ってみたけれど、

本日の教訓はもっと単純である。

イワシの煮魚缶を、味噌汁に入れてはいけない。

そして私は今、

鍋いっぱいの味噌汁と見つめ合っている。

どうする、これ。

悟りへの道は、今日も遠い。

サトリタガール。

😂