プレシャス / 2009年米 | TDR&MOVIE

イメージ 1

PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE

ハーレムに住むアフリカ系アメリカン人のプレシャス。実父と義父により2度妊娠をさせられ、そのため母親には嫉妬にまみれた、言葉と暴力で身も心も追い詰められていた。学ぶことに興味はあるものの、読み書きが出来ないことで、ソーシャルワーカーの手を借り、学校に通えない訳ありの子ばかりが集まる場所で勉学に励むことになる。辛く悲しい状況に、自分の生きる道を見出そうとしたプレシャスは、子供たちを連れ自立の道を切り開こうとする。

最初から、あまりにも惨たらしい環境にいる、プレシャスの生活を目の当たりにして、かなりショックでした。こんなにも、悲しい現実と劣悪な環境に生きている人がこのは世の中にたくさん居るという現実。それでも、人として少しでもまともになろうと努力するも、それを邪魔するのは自分の母親。言葉の暴力。そして、生傷の耐えない生活。そんな彼女の唯一の楽しみが、妄想世界での自分。きらびやかでスポットライトやカメラのフラッシュを浴びる夢のような生活。私は、セレブリティ!踊り、笑い、みんなに注目される自分!でも、一気に現実に引き戻される…母親の怒鳴り声で…

これでもかの如く、プレシャスをどん底に突き落とすような、出来事の数々。並の精神状態では、こんな状況、乗り越えられるわけがない。でも、プレシャスは少しずつ自分で前に進んでいくんです。とても強い精神力で。本当に強い心で。何が、彼女をそこまでさせるのかは謎だけど、本当に逞しい。彼女は諦めないんです。いろいろなことを。そのプレシャスを演じるは新人のガボレイ・シディべ。独特の存在感と、ふてぶてしい感じ…前半こそ、自業自得なのかなと思い、あまり同情出来なかったのですけど、自分のために自分の家族のために生きる姿を見ていて、心からがんばってこの環境から抜け出して欲しいと感じたのでした。

自分の娘ながら憎悪に満ちた視線で、暴力を振るうモニーク演じる母親メアリー。今の彼女がすがれるものは、それだけ。何の希望もない生活。彼女もまた、辛い経験をしてきたからこその逃げ道が、プレシャスやその子供を使っての生活保護。どこまでが計算で、どこまでが打算なのかわからなくなっている自分に憤りを感じながらも、母親もまた、行き場をいつも探しているのです。この母親を演じるモニーク。コメディアンとのことですが、そんな面影は全くなく、本当に酷い母親を演じていました。あの冷たい愛情のかけらも感じない視線…怖かったです。

助演のマライア・キャリーとレニー・クラヴィッツ。出演シーンは少なかったですけど、プレシャスが自立していく上で大事な役目を担っていました。マライアはちゃらちゃらした感じでなく、こういった社会派のシリアスなドラマにこれからも挑戦してもらいたいと思いました。そして、プレシャスに大きな希望を与えていく教師役のポーラ・パットン演じるミズ・レイン。実際、こういうフリースクールの教師は苦労が絶えないと思いますが環境の悪い生活をしてきた少女たちを温かく見守る教師役を好演していました。プレシャスと同じくこのフリースクールに通う、少女たちもそれぞれに前向きな雰囲気、とてもよかったです。

自分の置かれた環境。当たり前のように職業を持ち収入があり、物に溢れ、物が買える何不自由ない生活。治安の良さでは、他の国や街とは比べ物にならないくらいの場所に住んでいる幸運を、この作品を観て、ものすごく感じ、そして感謝しました。生まれ来る場所は選べないけれど、自分が生きる場所はプレシャスのように選ぶ権利があること。最近、子供への虐待のニュースをよく耳にする。例え、親であっても、人として生きる権利は与えなくてはいけない。奪ってはいけない。実際問題、プレシャスのように、なかなかその環境から抜け出ることは現実は難しいのでしょうね。

最初のシーンのプレシャスと、ラストシーンのプレシャス。明らかに表情が違います。

監督 リー・ダニエルズ
製作総指揮 オプラ・ウィンフリー 、タイラー・ペリー 、リサ・コルテス 、トム・ヘラー
原作 サファイア
音楽 マリオ・グリゴロフ
脚本 ジェフリー・フレッチャー
出演 ガボレイ・シディベ、モニーク、ポーラ・パットン、マライア・キャリー、シェリー・シェパード、レニー・クラヴィッツ
上映時間 109分
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id335599/