ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ / 2009年日 | TDR&MOVIE

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ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ / 2009年日

太宰治の同名短編小説の映画化。
戦後の混乱期を背景に、夫・大谷の道楽三昧に翻弄される妻・佐知を中心に、
その妻が、逆境を跳ね返し、強く生きていく様を描く。

う…こんなダメな男…こんな夫…捨てちゃえばいいのに!と、何度となく思ったことか…
でも、そんなダメな夫でも、夫は夫。そう簡単には、切れないものですよね。
一度は、愛した人。情もあるだろうし、ましてや子供も幼い。
そんな夫でも、信じてあげようと、どうにか立ち直らせようとがんばる佐知って人、凄いです。

夫の作った借金を地道に返そうと、自ら、その借金を作ったお店に、強引に押しかける。
そして、自らを借金のカタにするかのごとく、そこで働きたいと申し出る。
そう簡単に、こんな思い切ったこと出来ませんよね。普通。
働いたことのないであろう佐知が、飲み屋の酒癖の悪いお客たちを、持ち前の器量で、上手にあしらう…
何だか、爽快です。

そんな佐知の健気さに相反して、その夫・大谷は本当にダメな人ですねぇ
以前、若かりし頃の太宰治を主人公とした舞台を見たときに、こんなにも自堕落で悲しい人だったのかと、衝撃を受けた私。
今回のこの作品の小説家大谷が、太宰本人が自身をイメージして書いたのならば、
これほど、自分自身のことを知っている人は居ないのではないかと思いました。
きっと、太宰治という人は、とても寂しい人だったのだろうな…

さて、佐知と大谷を中心に、彼らにまつわる人々がそれぞれ、とても個性的で魅力的。
特に、室井滋、伊武雅刀の夫婦は、何ともいえない阿吽の呼吸で、素敵なのです。
決して、裕福でないけれど、太田に夫婦とは違う、強いつながりを感じる、そんな夫婦でした。
佐知に思いを寄せる青年・岡田に、妻夫木聡。
この岡田という人…アホですねぇ
どうして、よりによって佐知という人に、惹かれてしまったのでしょう。
どう口説いても、どう強引に近づいても、彼女のような人は、絶対に岡田にはなびかないでしょうね。
それは、女にだけにわかる、何か感じる!?というものでしょうか。笑

そして、大谷に思いを寄せる秋子には広末涼子。
出番こそ少ないながらも、強烈なインパクトで、この夫婦の間に入ってきます。
ラスト近く…佐知に向けた、あの微笑・・・凄いですね!女って、怖い!って、思わせましたよ。

人にはそれぞれの居場所がある。
一生懸命さと健気さで、強く生きる佐知に対して、始めは気の毒と思っていたのに、
徐々に、自分の居場所を見つけ、そこに根を張る彼女を見て、女というものは強い生き物だと感じたのでした。
その反面。男というもは、小さくて、悲しい生き物…
女と男の心底にある違い。
したたかさとか、図太さとか、強さとか…そして、不器用だったり、小さかったり、弱かったり…
色々な人間の内面を垣間見せられた、そんな作品でした。

監督 根岸吉太郎
製作総指揮 -
原作 太宰治
音楽 吉松隆
脚本 田中陽造
出演 松たか子、浅野忠信、室井滋、伊武雅刀、広末涼子、夫木聡、堤真一、光石研、山本未來、鈴木卓爾、小林麻子、信太昌之、新井浩文
上映時間 114分
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id334057/