一瞬のシーン
1987年作品/イギリス映画/リンゼイ・アンダーソン監督/岩波ホール創立20周年記念上映作品
昨年末に哀しいできごとがあった。
くわえて予期せぬ歓迎できないできごとに2度もみまわれ、わたしはうちのめされた。
一昨年末にも予期せぬできごとに、わたしは涙をにじませて、うちのめされた。
でも、もう、忘れてしまった。
忘れるためには、たいへんな努力が必要だった。
1年で365日、10年で3650日、50年でたったの18250日。
短い。短すぎる。忘れたいことは忘れてしまおう。
それらのできごとに関連することから、
思いがけずDVDプレーヤーが家に届き、それならばと
最も好きな(たいせつな,ともいえる)映画の
DVDを買おうと思ってさがしてみると、なかった。
はげしい落胆。
上は岩波ホールで上映されたときの「八月の鯨」という映画のパンフレットです。
わたしがもっとも好きな映画です。
パンフレットの中には淀川長治氏の、この映画に対するあふれる讃辞があります。
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この映画はすみずみまでも美しさで目に涙をあふれさせ
胸に人生の感傷を傷つけることなくやわらかくそそぎ込む。
かまうことはない、泣きたまえ、思いきり涙をあふれさせたまえ、
映画を見つめ、このように、風の音を聞き、海の香りを嗅ぎ、
野ぶどうをひとつ口に入れ、ひろい海を見つめる一軒家で、
月の夜を思い、満月の光が波に数百数千のコインをまくごとくきらめくこの映画、
しかもその波の上のきらめくコインは、とても金では求め得ぬタカラなのだという。
この四季、月、海、野辺、この自然への讃歌がこの映画に人生をも語らせているのだった。
(以上、淀川長治氏の言葉より抜粋)
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淀川長治氏の率直な讃辞と、ネットで「八月の鯨」のDVDをさがしたときに発見した
たいへんな数のDVD化を望む世間の声と、これらは届かないものなのだろうか。
とても残念です。
この映画のマフィンを焦がす場面に思わず「あらららら」と声をだした。
日々の暮らしの一瞬のシーンを積み重ねた映画、大好きです。
手に入らないとなると、ひどく、なつかしい。
ブレッド&サーカスでした。
