私、小学校5年生の頃だったか、1学期、ある日突然かかとが痛くなった。鉄棒やのぼり棒などの学校の遊具、階段などの高いところから飛び降りた時に、ズーンという痛みが出るようになった。ひどい時は頭のてっぺんに響くほどの痛み。幸い両足ではなかったので、どちらかをかばったりして凌いでいたが、我慢が出来なくなり、両親に訴えた。
「そのうち治るよ」
腫れてもいないし、傷もない私の足を見て、父は言った。商売をしていた我が家は忙しく、病院にも連れて行ってもらえなかった。昔はウチだけでなく、みんなそんな感じだったかな?それでもちっとも治らないので、何度も伝えて、やっと父が近所の外科に連れて行ってくれた。
そこで下された病名?は『成長痛』
「そんなの聞いたことがない」
と両親は近所の人に半ば自慢げに話していた。
今のように便利な湿布薬もなく、フェルトのような生地に、ドロリとした灰色のクリームを木のヘラで薄く塗る。それをかかとにぺたりと貼り付け、油紙で覆って、包帯を巻く。朝、クリーム状だったそれは、夜、はがすときには石膏のように固まっていた。
どれほど経ったか?夏休みの間にそれは治まった。けれど、今思い起こしてみるに、その間にグーンと身長が伸びたということはなかった。ただ、生理が始まると女子は成長が止まると言われていた中で、少しずつ少しずつ、高校生になっても伸び続け、私は167センチにまでなった。
そして、約30年後、息子が
「かかとが痛い」
と言い始めた。小学校高学年の頃のことだった。詳しく聞くと、自分の昔と同じような症状。勝手に『成長痛』として、市販の湿布薬や、近所の接骨院通いをした。
少年野球とサッカーをやっていた彼は、それぞれスパイクもはけず、クッション性の高いスニーカーに中敷きを追加して練習や試合をしていた。ある試合では、ピッチャーをやっていたにもかかわらず、スパイクをはいていない彼を見て相手チームのママさんたちが
「あの子、スパイク買ってもらえないのかしらね」
と噂しているのも耳にした。
当時
「成長痛の間は、寝ている時にミシミシと骨が伸びる音がする」
なんて何人かのママたちが言っていたけれど、ほんまかいな?少なくとも私も息子もそんなことはなかった。
そして、今、専門家がおっしゃるには『成長痛』なんてものはなくて、それは成長の過程において何らかの気持ちの変化で痛みが起きる、それを指すらしい。検査をしてなんでもないならば、それはメンタルが原因らしい。思春期のストレスとか友人関係の悩みとか親の愛情不足とか言われているようだ。かかと、膝、それぞれ痛い場所があるなら、検査をし、きちんとした病名がつくらしい。
背が伸びる成長に伴った痛みと信じて疑わなかった両親と私、夫と子どもたち‥‥‥。
メンタルが弱くて、親に愛情をかけて貰えなかったのか?いやいや、私はかけたつもりですよ!それとも頭が軽い……ただの遺伝だったのか?私と同じように少しずつ少しずつ伸び続けた結果、息子も190を超えた。