東京は7月にお盆の行事がある。我が家も然り。提灯をぶら下げてお墓まで仏様をお迎えに行った。ということで、8月のこの時期は仕事もお休みで、私たち夫婦はなんとなくゆっくり過ごせる。

 

 私は『遊歩道』ってのが好きだ。歩くことが好きらしい。だから、どこでもいいのだが、そうやって名前がついていると制覇してみたくなる。

 

 今年は軽井沢の『旧碓氷峠遊覧歩道』を2人で歩くことにした。以前、見晴台にある、茶屋を車で訪れたことがあった。力餅がおいしかった。

 

 知り合いの女性に

「ウチの母が旧軽からあの見晴台まで歩いたのよ。75歳の時よ」

と言われたことを思い出し、急にトライすることになった。10歳も年下の私たちが負けるわけにはいかない。入口から全長3.5キロとのことだったので上ると言ってもそれほどでもないだろうと、甘く見ていた。

 

 ハイ、最初に失敗したのは水分を何一つ用意していなかったこと。そりゃあ、昔、お互いに

「水は飲むな」

という部活指導の時代に育った2人ですが、今これはいけません。なんたって夫は3月に脳塞栓という大病をしている。水分は大事だ。心配性のはずの私がうっかりした。駐車場の車に置いてきてしまったペットボトル‥‥‥。気づいた時は既に遊歩道の入り口で、そこから先はどう考えても自販機なんてありはしない。


「1時間半ほどだと思うから、大丈夫だよ」

という夫の言葉を信じ、そのまま進んだ。今思えば、恐ろしいことだ。そんな夫の言葉、誰が信じよう?

「駐車場まで戻るのが面倒」

という私、こういうところは

「どうにでもなれ」

と思う私だ。

 

 最初のうちは高級別荘地が点々としていた。が、それが途切れ、道も一気に細くなり、ほぼ、けもの道になった。巾数十センチの湿った泥の上を歩く。両側は膝丈ほどの草が伸びている。もちろん大きな木も茂っている。苔もびっしり生えている。沢の水音だけが心を穏やかにさせてくれる。

 

滝が見えたおねがい

「ここで救急車は呼んでも無理だな」

「登山で道に迷った時に場所を知らせる花火みたいなのあるよね?どこに売っているんだろうね。今それを言っても遅いけど」

「それにしても、誰とも出会うこともすれ違うこともないな」

「ここでクマが出たらどうすればいいの?」

「スマホは繋がってるよ」

会話をして恐怖を振り払う。

 

あと1キロだぁ笑い泣き

 ヘビが急に出てきた。ハチに追われ、タオルを振り回しながら数十メートル進んだ。途中、二股に分かれた場所もあった。夫の判断に従った。あと少しというところで急に大雨が降り始めた。山の天気は変わりやすい。見晴台には目もくれず、茶屋へ駆け込んだ。

 

ご褒美にこの力餅は大事ですニコニコ

 結局、入り口から、どなたにも出会うことなくたった3.5キロであったが上り切り、ホッとした。体力的には無理のないコースだが、恐怖で疲れた。帰りはバスで、あっという間につるや旅館の前まで。

 

 ホテルに戻って気が付いたのが、足の出血‥‥‥。靴下もスウェットも汚していた。それなりの量だったようだ。

「靴擦れなんてしてないよなぁ?」

左右両方、洗い流してみると、両足首に3カ所の何か。調べるとどうやらヤマビルらしい。血がなかなか止まらない。その後、夫も同じくやられていたことがわかった。

 

 1日経って、かゆみも出てきた。そういえば、いつだったか、テレビで、

「ハイキングレベルであってもヤマビルには気をつけましょう」

って、やってたなぁ。


見苦しい画像なので、小さくしてみましたてへぺろ

 

 今度からはしっかり準備しなくちゃ。


 でも自動車で移動していたら、たった15分の距離を1時間半かけて上ったこの経験は、話題と記憶としては十分なものになった。何もなくて良かった。