「なんで子どもが生まれるんだよ~」
いや、中学3年生ともなれば、どうしたら子供ができるかぐらいは知っている。そうじゃなくてさあ。
かあちゃんが6月に出産予定らしい。かあちゃんは太っているから、全然気づかなかった。もちろん本人は分かっていただろうが。
「子ども3人の食事も満足に与えられなくて、よくももう1人産もうとするよ!これ以上、どうやって育てるつもりだよ!」
親の顔を見るのも嫌だった。それでも僕は暴力だけはしなかった。最近、サトシがおかしい。他校のヤンチャな仲間とつるんでいるようだ。夜もあまり姿を見なくなった。我が家は当然自分たちの部屋なんてないから、誰がいないかなんてすぐに把握できる。サトシの作った壁の穴は、大丈夫なんだろうか?引っ越ししなければ、そのままでいいってことか‥‥‥。
「もしかしたら高校に進学できるかも」
というかすかな期待ははずれた。赤ん坊が生まれたら、金だってかかる。僕に金を稼ぐ事が期待された。一度、
「高校に行きたい」
ととうちゃんに言ってみたが
「そんな金はないんだよ。働け!」
って言われた。私立なんてもってのほかで都立高校だってそれなりにお金はかかる。ニンベンのことをインベンなんて言うとうちゃんは、公共の福祉や支援なんて知ろうともせず、知ったところで、それに頼ることもしないような人間だった。
諦めていた進学だったが、ある日、担任に
「成昭学院高校の陸上部から推薦の話がきている」
と言われた。嬉しかった。進学できなかったとしても、貧乏と切り離された純粋なる僕の陸上の評価をもらえたようで、嬉しかった。
「勉強、もう少し真面目に取り組んでみようかな?」
初めて思った。
続く