「今度こそ、今度こそ」

と自分自身に言い聞かせながら、昼間は血も繋がっていない子どもさんとその親御さんのために懸命に力を寄せた。

 

 家庭環境が良くない子どももいた。純子はたびたび食事を作っては届けたりした。時には子どもを引き取って寝泊まりさせたこともある。頑なだったママも最後には純子だけには心を開いてくれたように思う。

 

 お兄ちゃんが学校に馴染めず、不登校になり、仕事をやめなければならないママもいらした。それでも市の児童課にかけあって、下の子が保育園に通えるように計らった。たった1年ではあったが、その子が笑顔で年長さんを過ごし、卒園していったことは純子の努力の成果だと思って、満足した。

 

 看護師の美優先生が来てくれたことは助かった。ダウン症、アトピー、てんかん、様々なお子さんの保育に関わることができた。卵アレルギーのお子さんに、それが含まれたおやつを間違えて提供してしまったことがある。それは命に関わることとして、ずっと純子への戒めとなっている。美優先生が、エピペンという注射を打った。それは、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤である。医師の指導を受けた者のみが使うことができ、その後は速やかに救急車の手配をするよう、義務付けられている。その一件があって、美優先生だけでなく、職員全員が講習を受け、注射を接種できる資格をとった。

 

 子どもの成長には注意深く目を向ける。何か発達の遅れが見られると感じても保護者からの相談がなければ、それは職員全員で共有するにとどめる。今のパパママは、子どもの数が少ないこともあってか、そうしたことにとても敏感だ。すぐに専門家を訪れる。それができない家庭、親子には手を差し伸べる。

 

 そうして純子は、出過ぎず、引き過ぎず、親と子どもの立場を考えて、務めを果たしてきたつもりだ。それだって不満に思った保護者の方は多くいらしたかもしれない。今は親の子どもへの期待値がどんどんとアップしている。それに対応するのも難しい。少子化についても大きな問題だと思っている純子だが、自分自身が1人しか産んでいない。この問題を考えると、いつも純子は微苦笑がもれる。

 

 保育士や補助の先生方には負担をかけることも多いが、子リス園は保育施設と共に職場でもある。皆さんが働きやすい環境を整えてきたつもりだ。

 

 夜は大輔と翼のことで、時間が許す限り話し合ってきた。これから、どうしよう‥‥‥。どうしたらいいんだろう‥‥‥。ただ、純子には一つ、取り組んでみたいことがあった。 卒園していった子も含めて、その笑顔が純子の心を満たしている。悩み、苦労、などの経験が純子の頭に詰め込まれている。それらを糧として進みたいと思う。未就学児から受けいれるフリースクールのような所を立ち上げたい。田舎の自然豊かな土地で。子育てのやり直しといったら、語弊があるが。

 

 さらに、純子は少子化についても考える。子どもを育てるのにお金が必要なことはもっともなことだ。が、国はそうした支援ばかりに目を向けている気がする。つまり、現在子を持つ家庭への支援だ。それで少子化が解消されるとは思わない。

 

 パパママ、保護者の声を聞くに、子育てそのものへの不安が大きいことがわかる。個性と言いながら、画一的な学校に通わせること、何かしらの障害をもっていたら、どうしたら良いのかわからないこと。そんな不安が、子どもを持つことを躊躇させているのだ。そんな人たちをどこかで助けたい。子どもにとっても親にとっても集える場所を作る。

「独りじゃないよ。こんなところもあるよ」

そんな場所。

 

 大輔は賛成してくれた。翼は何が何でも連れ出すつもりだ。

 

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