発端は6月に妹と画廊を訪れたことだった。少しは耳にしていたが、妹がそんなに絵画に興味をもっていたとは‥‥‥。そういえば、海外にいる頃、

「日本に帰る日が近いから、もう一度フランスの美術館に行ってくるね」

よくそんなラインが届いていたわ。イタリアもスペインも欧州各地の美術館をまわっていたようだ。

 

 私は画廊で油絵を目にし、やっぱり生きているうちに有名な絵画を見てみたいとは思ったが、本物を見るとなると、お金と時間と健康が必要、ってことで半ばあきらめている。たまに日本にその絵がやってきたとしても予約が取れないとか、混雑で何重にもできた輪の外側からほんの少し眺めるくらいの鑑賞だと聞く。

「大塚国際美術館ならば、行ってみたいなあ」

 

 描く才能もなく鑑賞する目もない私には十分だ。けど、夫は興味なさそうだし、既にオリジナルを見ている妹も敢えて行く気持ちなんてないだろうなぁ、と思っていた。

「いつか1人で行こうかな?」

 

 画廊からの帰り道、

「大塚国際、行っちゃう?」

思いがけない妹からの提案に私は即、オーケーを出していた。今までの旅は1泊だったけれど、四国まで行っておきながら1泊は寂しいと、2泊することになった。

「おとうちゃん、うどん大好きだったよね?」

って、高松も候補に挙がった。

 

 7月頃から予定を組み始めた。飛行機やホテルの予約は妹がすべてやってくれた。いつも申し訳ないなあ、と思うが、私がやるより何倍も速いからすっかりお任せだ。せめて私も、と1日目のランチの場所を探して予約した。いつも訪れた先々で

「どこにする?どこがい~い?」

「どうしようかぁ」

ってお互いフラフラしながら時間ばかり過ぎてしまう。今回は徳島に割く時間が少ないから、ちょっとは役に立てると思った。

 

 観光地を調べ、時刻表を見る。こういうこと一つ一つが楽しく、旅はここから始まっているのだなぁ、と感じる。

 

 当日、羽田での待ち合わせもうまくいき、離着陸が望めるカフェでのモーニングなんてシャレちゃって、気分は絶好調。なんたって2人共四国は初上陸となる。

 

 ところが、なんと飛行機が40分遅れると連絡が入り、搭乗してからも離陸待ちに長い時間が費やされた。日本全国あちこちで線状降水帯が発生していた。そんなことが関係しているらしい。そう、その日の天気は雨だった。

 

 なんとか徳島に着くも、予約時間を過ぎたランチは、キャンセルしなければならなかった。鳴門への乗り継ぎ電車の関係だ。都内での電車って、乗り遅れても次の電車がすぐにやってくる。けど、観光地というのに電車の本数って少ないのねぇ。結局、雨の中『阿波踊り会館』まで歩き、料金も発生するというせこい理由で、入館せずに土産物スペースだけを歩き回った。何も買わずに駅に戻る。

「『なると金時』なんて買ったら重くて送るしかないよね」

「このキーホルダーは、私たちの年には要らないね」

「絵はがき買って、結局出す人いないよね」

 

 本当は映画のロケ地にもなった眉山のロープウェイも予定にあったが、飛行機の遅れと悪天候のためにあきらめた。

 

 

 都内にもあるパンのチェーン店で軽くお昼を摂り、

「ここまで来て、ここですか!」

と2人で笑いながら、気合を入れ直して私たちは徳島駅から鳴門に向かった。私が唯一予約したお昼も役に立たなかった……。

 

   つづく