私は進んで募金や寄付をするタイプではない。それでも災害などが起こると、せめて……とATMに走ったこともあるし、電話をかけたこともある。


 母は、その昔、街角で座っている傷痍軍人さんに

「これを渡してきなさい」

と私に小銭を握らせる人だった。一方父は

「さも自分が上に立つ人間だと人を見下すようであまり好きじゃない」

と言う人だった。

 

 忘れられない「寄付」がある。その時、なぜだか急に思ったのだ。父がまだ元気だった頃、そうねぇ、85を過ぎた頃だったか。父には毎年、卒業した旧制中学の同窓会報誌が届いていた。そこはのちに都立高校となり、私にも馴染みのある高校だった。父はそこの第1回卒業生であった。

 

 実家に行き、年に1回ではあったが、その小冊子に私は隅から隅まで目を通していた。そして、私は

「ねえねえ、おとうちゃん、1期生なんだからさあ、少しでいいから寄付でもしてみたら?」

と突然に思い立ったことを口にしてみた。

「そういうのはオレは苦手なんだよ」

と言う父に逆らい、なんと勝手に自分のお金数千円を父の名前で振り込んでしまった。

 

 後に

「勝手なことするなあ」

と言われたが、翌年の会報誌には父の名前が堂々と載っていた。

 

 それ以降だ。なんだか、そこに同期の方々のお名前が増えたように感じた。そして、何が嬉しかったかって、父が

「おぉ、○○も元気なのか。いつも片手に本を抱えていた」

とか

「△△は、お坊ちゃんだったなあ。革靴がいつもピカピカだった」

とか

「☆☆は大学に行って音楽なんかやってたよ」

と、目を細めながら思い出を語っていたこと。

 

 5年ほど、続いたろうか?父が亡くなり、同窓会宛てにメールをお送りして、そのことを伝えた。最後は訃報欄に父の名前が載った会報誌が届いた。

 

 父はやっぱり進んでお金を出そうとはしていなかった。けどね、

「おとうちゃん、それなりに楽しんでいたじゃないの!」


 私の勝手な行動も今なら許してくれるかな。