いつだったか、バスに乗っている時、停留所でご高齢の女性が乗ってこられた。運転手さんに、カードを見せた。おそらく「シルバーパス」と呼ばれる物と思う。高齢者向けサービスの一環で、バスに無料(自治体によっては少額の負担あり?)で乗ることのできるカードだ。
腰の曲がったおばあちゃんだった。すると運転手さん、大きな声で
「お客さん、もうちょっとよく見えるように出してください!」
と言った。マイクを通して、バス車内に響き渡った。
中には期限の切れているものや似通った色形のカードでごまかそうとする悪者もいるのかもしれない。そんなこともあってか、運転手さんはきちんと確認をしたのかもしれない。それは分かるが、杖をついたおばあちゃんがちょっと気の毒だった。
母は70代の頃、このカードを申請して、バスに乗っていた。80を過ぎて、一切公共交通機関を使ってお出かけすることもなくなり、そのカードも見ることはなくなった。東京都なのか、概ね70歳以上の住民税非課税者が対象だったような。何度か母が書類に何やら書き込んでいる姿がうっすらと記憶に残っている。1年に1度申請があって母の地域では、当時1,000円くらいお支払いしたかな?
私もその70歳に近づき、気になりだした。今は微々たる収入があるから権利はないけれど、いつか申請してゲットしなければ。
先日のことだった。やっぱりご高齢の女性がバスに乗り込んでこられて、そのカードを運転手さんに見せた。すると、そのカードケースに別の交通系ICカードも入っていたのか、そこから運賃が引き落とされてしまったようだ。
「お客さん!この機械にあまり近づけないでください。今、もう1つのカードからバス代が引き落とされてしまったので、返金しますから、お待ちください」
えっ?そんなことあるのね。ま、確かによく注意喚起されてはいる。音が鳴らなかったのでもう1度タッチしてしまって、とかパスケースに2枚のカードが入っていて、とかその他、運転手さんのミスもあって、二重取りされてしまうって。でも「シルバーパス」と「交通系ICカード」の組み合わせ……。考えればわかるけれど、相手はご高齢者です。
こういうこと、私はとても苦手だ。自分が当事者だと思うと怖い。返金の間に他のお客さんを待たせてしまっている。申し訳なくて、恥ずかしくて、身体と心が縮こまる。でね、先に述べた通り、過去には
「しっかり見せてください!」
なんて注意をうけた場面も見た。今回のように、反対に近づけすぎて、二重精算してしまうこともある。あの機械の半径どれくらいが反応しちゃうわけ?機械が反応せずに運転手さんによーーーく見せるにはどんな風にすればいいの?
「シルバーパス」を手にする前から私はこんなことでドキドキする人間なのだ。
「専用のパスケースを購入して、そのカードだけを納めて使うようにしなくちゃ」
って、今から心配している。
そして、自分で機械のありかを想像しながら、実際に手を動かして運転手さんに見せる仕草をして、その自分に笑えた。