65年以上も生きてくると、芸能人をお見かけしたという経験はあるものだ。が、住まいは東京のはずれなので、地元ではない。京都の渡月橋で高橋英樹さんが歩いていらしたとか、新宿で船越英二さんがタクシーをとめようとなさっていたとか。
そんな時は心の中で
「オオーーーッ」
となる。が、顔には出さない。視線は逸らしてしまう。
けど、芸能人関係で一番興奮したのは、20歳の頃の友人のこと。実際に私がお見かけした話ではない。年頃もあるかと思う。いろんな事にときめいたりテンションが上がったり、感動し、興奮するハタチ。今じゃあめっきり減った。推しもいないし‥‥‥。あ、志尊淳くんは気になるけれど。
当時、短大に通っていた。なんとなく仲間になった1人が熱狂的ともいえる浜省のファンだった。それまで私は浜田省吾さんを知らなかった。彼女のおかげで覚えたし、チェックするようになった。最初は強引に回ってきた彼の歌のテープもいつからかみんなで貸し借りするようになっていた。テープってところが懐かしい。独特な声と歌に惹かれた。
その頃、浜田省吾さんが夜のラジオ番組でDJもなさっていて、毎回欠かさず聞くようになった。私だけでなく、仲間もみんな、彼女に感化された。
ある日のその番組内で浜省が言った。
「今日、山手線内で、ある女性に追いかけられて、隣の車両に移っても彼女は追っかけてきて、困った。今まであまり気づかれることもなかったから。仕方なく、途中で降りた」
そんな内容だった。私は部屋で大声を上げちゃった。
「エッコだぁーーーーー!絶対にエッコだ!」
彼女は山手線を使って通学していた。
翌朝、その話題でもちきり。そこに現れた本人。とんでもなく興奮している。
「昨日、学校帰りに浜省を見たのよ。そこで騒ぐと他の人たちにもバレるから、私は黙って刑事のように追っかけたの。途中で見失ったから、すごく残念だったけど。そしたらさぁ、夜、私のことがラジオで公表されたの。1人でキャーキャー叫んじゃった」
「ハイハイ、ラジオ、聞いていましたとも。みんなで今その話題で持ちきりだったのよ」
私にとって、街中で見かけたってより、今までで一番エキサイティングな芸能人話。浜省話でその日は盛り上がりまくり。
あの頃の若さと黄色い声、今、欲してます。あ、黄色い声はこの年には不気味だわね、要りません、若さだけで!