母の退院に向けて、カンファレンスが行われた。
最初に医師から伝えられたことに、私は驚いた。
「1番の懸念はお薬管理です」
入院するまでの母は、1人で管理して服薬できていた。お薬カレンダーも使っていなかった。2か月半に1度の内科通院日が近くなると、私がチェックするが、間違いはほぼなかった。それ以外にも血圧は毎日10時半と4時半といった具合に決められた時間に測って手帳に記入していた。
このふた月の間に母はそこまで衰えてしまったのだろうか?90という年齢、頭の中はどんななのか、私には想像もつかない。
先生のお話によると
「認知(短期記憶)検査は2/6で、計算は13/30という結果です」
いくつかの絵を見せて、別の作業をした後に先ほどの絵を思い出してもらう、それは6個のうち2個。計算は、30問中13問の正解だったということだ。そこの結果に間違いはないはずだ。そして、そのレベルではお薬の管理を本人だけに任せることはできないという先生の診断のようだ。
でも私は、人それぞれに得意?分野があって、それによって記憶の生かされ方が違うのではないかと思う。特に高齢者は短期記憶は不得手だ。昔の思い出は、びっくりするほど覚えているのに直近のことは忘れる。すでに私も同様です。
母は、自分の身の回りに降りかかる災難、防犯などにとても心を配る。そして
「食べることと寝ること、人間これが1番大事」
が口癖。『生きること』に懸命な母だ。そして、日々のルーティーンをこなす。身体に染みついているかのようだ。
朝、日めくりメモを確認する。本日の予定を見る。今日が何日かなんて、私より即答できる。シルバーカーのお散歩で1日が始まる。ゴミ出しもきちんと仕分けをして10メーターほど離れた集積場まで、シルバーカーに乗せて運ぶ。
食事は手作りする。もちろん、出来合いのお惣菜も買うけれど。家の中では常に壁を伝って歩く。ふらふらと危なっかしいほどで、スローな動きだが、確実だ。家具などに手を置く。転んでけがしないように、慎重な母だ。
唯一の趣味は庭のお花を育てること。カマで芝刈りもする。
門の外を見て、不審な車が停まっていると4桁のナンバープレートの数字を覚えて、家の中に入り、メモする。そして私に電話をかけてくる。耳の遠い母は、伝えたいことだけ言って切る。こちらからかけた時など
「聞こえないので切りますね」
と他人対応。
「おかあちゃん、beachanだよ!!!」
と叫ぶも、ガチャンと切られる。
一方で、テレビやエアコンのリモコンなどの操作は苦手。「入・チャンネル(母は地デジしか見ません)・切」「入・暖房(冷房)・切」と、何とも簡単なスイッチなのに、できない。家電なども含めて私が大きな絵を描き、それに従って操作している。
家電のリモコンはすべてこんな感じ![]()
銀行、郵便局、ATMが何の機械か知らない。必ず対面。 スーパーでも会計は店員さんのいるところに並ぶ。公共交通機関を使ってのお出かけは、もう何十年としていない。私が誘っても断られる。日々の暮らしこそが大事な母なのだ。
そうそう、足しげく面会に行ってくれる妹から聞いた話。リハビリの計算問題で
「5-8=」のような負の計算が出されたらしい。母は
「引けません」
と答えたって。そうだよ、日常生活においてそんな計算、全く必要ない。マイナスが出てくることはない。できなくたって支障はない。お金が足りなければ(マイナス)購入できない、それだけだ。キャッシュカードも持っていない母だ。
先日の面会では、退院までに買っておいてほしいものを紙に書いて渡された。野菜、牛乳、パンなどに加えて、「ささげ2袋、お赤飯用」だと。そういえば、もち米があったな。調理する気満々じゃないの。
はてさて、母はどうなるだろう?すべては退院後の様子にかかっている。こんな母だから、「お薬の管理」はできるんじゃないかと思う私は楽観的過ぎるかな?

