友人が結構な割合で便座にひびが入るという。えっ?便座にひび?入れたことない。夫も私も子どもたちも。彼女はとってもスリムな体形で、どうしてそうなるか、想像もできなかった。逆に我が家は家族皆、体格のいい方だ。

 

 すると、ブログのお仲間さん情報で、便秘などで、身体をひねったり、前後に傾けたりと、便座にかかる圧力が真上からではないので、そういうことになりがちだと知った。なるほどと、その友人にも教えてあげたら、

「そうそう、私も便秘症」

と、長年の問題が解決したかのように、喜んでいた。今まで家族に

「また、かあさんがやらかした」

とずっとけなされていたと言うから、良かったねぇ。

 

 25年ほど前のお話。子どもらが野球チームに所属していて、私はお手伝い要員として合宿に参加したことがあった。とは言っても母達はそれほど力仕事があるわけでもなく、怪我とか具合の悪くなった子どもの介抱をしたり、指導者、選手らの水分補給の準備をしたりってなところだ。2-3泊だったろうか?

 

 さて、そのメンバーのママさん、ある朝

「どうしよう。便座割っちゃった」

と言ってきた。

「どうしようというより、宿の人に伝えて謝るしかないんだけどさぁ」

 

 それが、ポッチャリ体形のママ。もっとはっきり言うと、だいぶ太っている。自虐ネタにしているくらいだから、

「あ~ぁ、○○ママならやりそうだわ」

「それにしてもどうしたら便座を破壊できるわけ?」

と、みんなからの突っ込みが入る。

 

 それは数年経っても

「あの合宿でさあ‥‥‥」

と話題になるほどだった。今なら

「もしかして便秘?」

と私がフォローしてあげられるのに、その頃は体型だけが原因とされてしまって、お気の毒だったわ。そのあと何度となくみんなで笑ったことも思い出だけど。

 

 そして、先日、その仲間の一人の男性が突然亡くなられた。まだ60代だもの、お若い。お酒大好き、明るくて優しくて力持ち、 他のパパママからの信頼も厚かった。

 

 お通夜のあと、皆で偲ぶ会として飲み屋さんに入り、アルコールで献杯となった。色んな思い出話が飛び交う。合宿の話も。そして当たり前に、例のママの『便座破壊事件』も話題に上る。すると彼女が言った。

 

「あの時、△△パパ(亡くなられた男性)にさあ、『俺が宿の人に、壊してしまって申し訳ない、って謝っておくから』って言われて、そうしてもらったのよ。優しい△△パパだったよね~。ほら、細けりゃいいけど、私、デブだからさぁ、いかにもって感じでしょ?一応女だし。宿の人に陰で笑われたらかわいそうだからって、△△パパが気を遣ってくれたのだと思う」

一同、さらに号泣。

 

 「そんないい話、どうしてもっと早く言ってくれなかったのよ。△△パパが生きている時に知りたかったわ」

と彼女に向けて非難の嵐。

 

 私は便秘の話はその時はやめました。便座の話は感動で終わります。