私が子どもの頃は、そこまで美しい話じゃなかったクリスマスプレゼント。サンタさんが持ってきてくれるなんて夢のような話。


 実家はお菓子の入った赤いブーツが定番だった。25日の朝目覚めると枕元に置いてあった。いつの頃からか届かなくなり

「サンタさんはいないんだ」

と思うようになった。そもそもいるいないをそれほど気にしたことはなかった。

 

 クリスマス、それは年を経るごとに大きなイベントとなっているようだ。夫はこういう行事が好きだ。子どもたちが小さい頃は

「サンタさんがプレゼントを届けてくれるんだよ」

とその存在を信じこませようと必死だった。そして、

「いい子にしないとサンタさん来ないぞ」

「あ~あ、それじゃサンタさんは来ないからな!!」

などと、しつけのために、ここぞとばかりにサンタさんに登場していただく。サンタさんに申し訳ない。

 

 師走に入ったあたりから、夫はまず、子どもたちに

「今年はサンタさんに何をお願いする?」

と聞く。そして、それをもとにまず母である私が近くの街のデパートや商店街のおもちゃ屋さんをのぞく。

 

 その頃は、まだまだネットでお買い物をすることなどなくて、商店をまわるのだが、だんだんと個人経営のおもちゃ屋さんも減りつつあった。私が調達できなかった時は夫が仕事のついでに探すことになる。それは広い範囲にわたった。大体は解決してきた。

 

 ところが、長男が3年生の頃だったろうか?『ロックマン』というファミコンソフトを頼まれたが、なかなか見つからなかった。大変な人気で、都会のデパートも商店もどこもかしこも売り切れだった。夫は長男に

「なんだかすごくみんなが欲しがっているみたいで、人気があるらしい。サンタさん、もしかしたら届けられないかも‥‥‥。そしたら、何頼む?」

なんて予防線を張った。すると長男

「サンタさんはサンタさんだから、絶対届けてくれる。 『ロックマン』じゃなきゃいやだ」

と断言。そうなったら夫の行動にはさらに熱が入る。

 

 結局、夫は我が家の隣町の小さな駅にある昔ながらのおもちゃ屋さんで、24日の仕事帰りに見つけた。ここで無ければ諦めよう、とした最後の一件だった。本当は諦めたくないが、それ以外に、もう私たちの知った店はなかった。


 夜8時、半分閉まっていたシャッターから

「すみませ~ん。まだやっていますか?」

と言って腰を曲げて入ったそこに、それは売っていた。夫はおそらくガッツポーズをしたのではないかと思う。彼にとっては家族でのパーティーより、サンタさんの存在が大事だ。


「これ、今、すごい人気なんですよね」

プレゼント包装をしながら店主さんに言われたらしい。この話、決して盛ってません。

 

 いつの間にか子どもらがサンタさんは存在しないことを知るところとなり、「夫の仕事」も終わりを告げた。

 

 さて、先日、孫Bくん、なんとなく、テレビのニュースを見ていた。その内容が「貧困家庭の子どもらに両親に代わって自治体がプレゼントを届ける」というもの。2年生でも理解できたようで

「サンタさんってパパとママなの?」

と聞いてきたらしい。

 

 「あ~ん!こういうニュースは子どもが寝てからにしてよ~」

 

 その質問に、パパはさらりとスルーしたらしい。ただ、貧困家庭にはサンタさんが来られないって聞いたら、そこまで思いを寄せていなかった私も反省とともに心が痛む。昔はほとんどの家庭がお菓子屋で売っている赤いブーツですんでいたのに。その行事がエスカレートし、高価なおもちゃとなったら、そういう事態も生じてくるのか‥‥‥。いや、赤いブーツだってお金はかかる。

 

 さて、パパママは友人夫婦が毎年やっているお芝居?を聞いて、それを計画中だそうな。それは、24日の夜、クリスマスツリーの横にサンタさんのためのクッキーとトナカイさんのためのニンジンを用意するというもの。

「えっ?トナカイさんって、ニンジンが好物なの?」

私は知らなかったわぁ。

 

 そして、25日の朝までにクッキーはママのお腹に収め、パパは、ナマのニンジンを一口かじって、置いてあった場所にそれらしく残しておく。

 

 こういうこと、今はアルアルらしいけど、どなたが考えるのか、感心しちゃう。私の子どもの頃とはえらい違いだわ。

 

 そして、ママが

 「ねえねえ、クッキーとニンジンをサンタさん達にプレゼントのお礼として置いておくのはどうかな?」

と孫Bくんに提案したら

「それいいねぇ~。なんか他にあったまるものも用意したらいいんじゃない?」

「あ、でも冷めちゃうかなぁ」

とすっかり妹たちとはしゃいでいたらしい。

 

 やっぱり2年生は、2年生。はてさて、真実を知るのはいつなのだろうか?