それは、もう20年近く前のことだ。
初めての海外旅行、仲良しの友人6人で長女はハワイに行った。若い女子が集まれば、テンションは最高潮。往きの機内から既に盛り上がる。お互いの写真を撮りまくり、機内食が出されればこれまたパシャパシャとやったことだろう。デジカメだもの。
私たちの頃のフィルムネガ写真とは大違い。36枚フィルムが現像してみたら10枚しか写ってなかったなんてよくある話だった。便利になった。撮り放題だ。失敗していたら削除すればいいし、気に入らなければこれまたゴミ箱に捨てればいいのだから。さらに編集までできちゃう。
さて、機内も暗くなり、娘はそのデジカメをシートのポケットに押し込んだまま、トイレに立った。そして戻ってきて、そのデジカメが無くなっているのに気づく。がもう遅い。いやいや、遅くはないのだ。だって、それを盗った人間は間違いなく機内にいるのだから。飛行中のそれは、出口のない個室だ。
娘はCAさんに告げたが、どうすることもできないらしい。
帰国後、これを聞いた私は思わず
「何やってるの!デジカメもそうだけれど、データも盗まれているってことよ!」
と叫ぶ。怒り心頭。それに対して、彼女にとってはそれは1週間も前の出来事。しかもその後は楽しかった思い出がいっぱいで、そんなことは大したことじゃないとばかりに興奮している。
「カメラで撮れなかったけど、心にしっかりと収めてきたから。それにみんなが後でデータをくれるって言ってた」
それを聞いてさらに私の怒りは、マックスに。
「何が『心に収めた』だよ!」
この1週間、私は掃除と洗濯、料理をしていたのですよ。あ、そこは無関係かしらね。そして、彼女の不祥事とはわかっているが、これって何とかならないのかな?データの悪用がなかっただけ、良しとするしかないのかしら。
先日、同じことがニュースになっていた。「機内盗難」は20年近く経ってもそのままなんだね。自己責任です。