父が亡くなって数年が経つ。それでも父宛の郵便物は届く。
実家で90歳の母が独り暮らしをしているので、土日は、なるべく母の様子を見に行くことにしている。いつも1週間分の郵便物が決まった場所に置いてある。
母自身に届いたものは開封し、中を確認したようだが、
「beachan、これはどうすればいいの?」
とか
「これは捨ててもいいんだよね?」
なんて会話になる。中には返信が必要なものがあって、それは私の仕事になる。
その中に父宛の物もたまに交じっている。が、母は絶対にこれを開封しない。私の許可なしに処分しない。なぜだか聞いてみたこともないし、私の口から
「おとうちゃんは死んじゃったから、これはそのまま捨てていいんだよ」
という一言も出たことがない。その言葉は出にくい。
生前、父が気に入ってお取り寄せした食品だったり(と言っても私が手続したわ)、ちょっとどなたかに贈り物をする際利用したお店だったりから、定期的に注文書が届く。父の名を使って何ら問題もないので母は今でもそのまま使ったりもする。父宛に品物が届くのもこれまた母にとっては特別なことなのかもしれない。というわけで、わざわざ
「父は亡くなりました」
なんて連絡もしない。母が元気なうちは、このままにしようと思っている。
ところが、この時期、大量に選挙関係の郵便物が届く。これまでそのままにしてきちゃったけれど、郵便料金も値上げとなり、もしかして税金からこれらが使われている?と思ったら、このままにできない気がした。
それがね、まったく同じものが4通も5通も届く。これらのチェックくらいできそうなものに‥‥‥。していただきたいわ。また、知らない人の名前でも届く。名字が同じだからと、紐づけされてしまったのかしら?いつぞやのマイナンバーカードみたい。そうして、実家分だけでも数百円のお金、無駄にしているってことになる。そのお金、そのまま欲しいです。
私は、勇気を出して選挙事務所だか党本部だか個人事務所だか、何カ所も、電話をした。
「この通信費用はどこから出ていますか?」
の言葉を頭の中にぐるぐるさせながら
「おんなじ物が何通も届くんですよ~。無駄ですから確認をしたらいいと思うのですが」
と穏やかに伝える。そして父はもうこの世にいないことも‥‥‥。ちょっと寂しい。
以前、友人10人ほどの飲み会の席で、ある女性に
「この方、すごく頑張っている議員さんだから、応援してあげて」
と言われて、1枚の紙が回ってきたことがある。全員が氏名住所を書いている。私1人がそこで拒否できる雰囲気でもなく、ペンを動かした。もちろん、そこに名前を書いたからといって、選挙においてその議員さんに投票しなければならないなんてことはない。各自の自由だし、バレることもない。私はいつも自分の意思で決める。
ところが、その後、ずっと選挙前になるとその議員さんのハガキが届くようになった。父もこんなことになって、あちこちから郵便が届くようになっちゃったのかなあ?今となっては聞くこともできない。
あらま、父宛の郵便物の話からすっかり選挙の話になっちゃった。