子どもの頃、弟とよくけんかをした。と言っても姉である私は親に

「お姉さんなんだから」

とか

「それくらい我慢しなさい」

と言われていたから、それほど回数も多くないし、ましてや取っ組み合いのけんかに発展することなどなかった。

 

 それでも

「ここで黙ってはいられない」

という気持ちや

「いつもいつも私が我慢するのは耐えられない。だって悪いのは弟なんだから」

という感情で、口げんか、からの叩き合いはあった。

 

 こうして綴ると、いつも「私は悪くない、立派なお姉さん」として描かれてしまうが、私の方に非があることもあっただろう。そういうことって忘れるんだよね。いつも自分が正しいことにしちゃう。そもそも小さい頃のけんかの理由すら覚えていない。それほど些細なことだったのだ。

 

 たった一つ忘れていないけんかの種がある。それは『ロンパールーム』という子供番組を見ていた時のことだ。

 

 うつみみどりさんが子ども5人ほどを相手にミニ幼稚園のようなことをする。歌を歌ったり、ボールを投げてキャッチしたり、パネルシアターのような作業でお話づくりをしたりしていた。牛乳を飲むおやつの時間もあった。

 

 最後にはみどりおねえさん(当時、ですからね)が手鏡のようなものを持つ。それが、枠だけになり,

おねえさんの顔がアップで映し出され

「ミチコちゃんおげんきですか?」

「カズオくん、おともだちとなにしてあそんでいるのかな?」

「ヒロシくん、ごはん、ちゃんとたべましたか?」

などなどテレビを観ている子どもたちに声掛けがある。

 

 私の名前は、とってもありふれていて、よく呼ばれた。もちろん、私個人に宛てていないのはわかっていたが、

「あ、今、呼ばれた~!私呼ばれた!私のことだ!」

って弟に自慢げに言っていた。すると弟は

「僕だって呼ばれたことがある」

と言い返してきた。弟はちょっと珍しい名前で、みどりおねえさんがその名前を口にしたことはなかったと思う。

「えっ?いつ?いつ呼ばれた?私、聞いたことがないよ!」

と言うと弟は

「この前beachanがおしっこに行っていた時」

と言い返してきた。そんな状況はなかった。私はロンパールームを見ている最中にトイレになんて行っていない。

 

 挑発気味に言ったのは悪かったと思うが、嘘はいけない。そうしてけんかが始まる。最初は手をポンと叩くくらいだったのに、エスカレートする。腕になり、肩になり、背中になり、当然力も増してくる。その辺りで親の

「やめなさい!」

が入る。

 

 今度は、だんだん力が弱くなりながらもお互いに、最後は自分の一発?一手?で終了したい気持ちが強い。人差し指で相手の太もも辺りをチョコンと突く。少しずつ間隔も開ける。でもやっぱり自分から止められない。そのうちにまた次第に強さがぶり返していく。再び親の怒声がとぶ。

 

 あれってなんだろう?絶対に自分が最後で終わらせたい。チョン、でさえも。

 

 そして最後に

「負けるが勝ち」

と父に言われて私が折れる。

 

 小学生にも満たない子がこらえることができる。

 

 一方の大人はどうした?歴史、文化、信条、色々なことが入り乱れての国同士の戦いではあっても

「負けるが勝ち」

と思えたら多くの人が犠牲になることはないのに。やめたいと思っているのに自分から折れることができないって子ども以下じゃないの。

 

 あれほど心の痛い出来事はない。