退院後の母をかいがいしく妹が看てくれている。そんな様子に思い出したことがある。

 

 私が結婚したころ、弟は仕事の関係で実家を離れており、実家は両親と独身の妹の3人住まいだった。

 

 ある日、実家に行ってみると父がぼやいていた。

「まったく、朝からおかあちゃんとちゃっちゃんの言い合いで、家の中の空気が悪い」

どうも妹の帰りが午前様で母は眠れないらしい。寝ていても帰ってきた妹がシャワーを使ったりして目が覚めてしまうって。

 

 後日妹の言い分を聞いてみた。まず、妹は17時で退社できる仕事ではなかった。当然、友人とのお楽しみも遅い時間帯となる。私は

「『ブツブツ怒られるなら早く帰ろう』って思わないの?」

と聞いてみた。すると

「楽しいんだもん。何を言われたって聞き流せばいい。楽しい時間を削るなんてもったいない」

と言うのだ。私は楽しい時間を削ってきちゃったのかな?もったいないことをしてきたのかな?同じ母の子とは思えない。

 

 第一子、長女ってのはとかく

「しっかりしなさい。女の子なんだから」

「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」

って言われて育つ。

「なんだか損してる気分だよ」

ってずうっと思ってきた私だ。

 

 でも最近こんな風にも思う。昔からの言い伝えや格言みたいなものの好きな母、それらをよく記憶している母がこの前言った。

「『ツがつくまでは手をかけて、ツがとれたらば目をかける』って言葉があるでしょ?ひとつ、ふたつ、みっつ、からここのつ、の9歳まではツがつくでしょ?それと10歳以降のことだよ。子育ては大事で難しい」

なるほどねえ。昔の人はよく言ったもんだ。

 

 でね、私は本当に手と目をかけてもらったと思うようになった。我が子を育ててみて、それがどんなに大変か、わかった。

「ウザイ」

と思った時期もあったけれど、それは親の愛情だわ。細かいことを指導されたけれど、理不尽な母ではなかった。

 

 弟と妹が愛情をかけられていなかったということはないけれど、親はどうしたって、下の子にいくに従って疲れてくる。

 

 2人とも道を外れることなく私より「我が道を行く」ことに長けた芯のしっかりした人に育った気がする。

 

 今あれこれ言ってもね。それぞれ還暦過ぎたしね。