「小さい頃にいろいろなスポーツをやらせるとよい」
私が子育てをしていた頃、よく耳にした。と言ってもスケートや弓道などの特殊なスポーツは、親がやっていたとかやらせたいとか、子どもがやりたいとかの強い気持ちがないと、なかなかできない。そうしてサッカーや野球、バスケット、水泳、などをやる子どもが多い。
長男・次男は小学校卒業までサッカーと野球をやっていた。クラブチームではなく、地元の小学校で、父親や卒業生がボランティアで指導してくれた少年チームだ。
それでも地区大会などの公式戦もあり、子どもたちは喜んでやっていた。勝って飛び跳ね、負けて泣き、良い経験を積んだと思っている。
忘れられないことがある。それは、次男が高学年になり、サッカーの公式大会の抽選会議に参加した時のことだ。当然ながら、こうしたチームでは親の力が必要だ。合宿もあるし、試合の付き添いなど、協力した。私はその会議出席のお当番になっていた。
会議にて、リーグ戦の抽選があり、、その代表者がグループ毎に集まり、試合日程を決めることになった。そこで1人のお母さまが発言した。
「ウチのチームは野球をやっている子も多くて、試合が重なるとどちらかを棄権することになります。もちろん、ウチの勝手な話なのですが、子どもたちのために少しでも配慮していただけると嬉しいのですが。できるなら、試合日程を工夫して組んでもらえたら」
その発言は決して高飛車なものではなかったと思う。
「無理ならば、もちろん不戦敗として、納得しています」
が奥に含まれていた。
「我がチームと同じような学校、あるんだなぁ」
と思いつつ、聞いていた。ウチにとっても有難い。
すると、突然あるチームの父親に
「そんな中途半端なやり方でスポーツをやってるの?どっちかはっきり子どもに選ばせろ。そんなチームはどうせ勝てない。そんなチームのために必死でやってるウチのチームに配慮しろとはおかしいじゃないか」
と言われた。
半分怒鳴ったようなその口調に私は心の中で
「このクソ親父!!あんたみたいな人がいるから、子どもたちは、興味があってもそれを封じて一つのスポーツに絞らされているんだよ~」
と叫んだ。
せめて小学生のうちはいろいろなことをやってみてもいいのでは?両立もできるのでは?そう思っていた私は、残念に思った。子どもたちの泥まみれの真っ赤な笑顔が頭に浮かび、悲しくなった。