高校3年生の夏、私は予備校に通った。あ、予備校というのは浪人生が通うところ?ということは塾?講習会かな?ほんの1週間。
当時、私の住まい辺りでは「Yゼミナール」「S予備校」「K塾」が三大予備校と言われ、人気が高かった。私は天邪鬼だから、それ以外のところに通うことにした。
「英語」「日本史」「古文」と、そんな感じだったろうか?選択方法としては、同じ日に空き時間がないようにっていう理由だけを考えて、時間割を組み、申し込みをした。もちろん、何のリサーチもせず。すると受付の女性に
「良かったですね。『日本史』は残り5人ですよ」
と言われた。それでも何も考えずに当日を迎えた。
英語‥‥‥50人ほどの教室に20人ほどの生徒。普通に高校の先生のような男性の講義。古文‥‥‥様子は忘れたけれど、大学生のような若い先生が真面目にしゃべる。アルバイトかと思った。真相は分からず。そして、日本史‥‥‥。
200人以上の大教室、既にほとんどの席が埋まり、私は後ろの方の隅っこに座った。ほそーい身体のちょび髭をはやしたおじさん(当時の私にはおじさんに見えた)が入るや否や拍手と歓声の嵐。
「えっ?これはなんだ?」
始まった講義に私もすぐに虜になった。そのリズムのいい口調に、笑いを取り込んだ内容。「中世」といわれる時代の講義、1回90分が5回にわたって行われた。90分があっという間に終了する。人気の理由が分かった。私は毎日が楽しみになった。あわててその先生の別の講座も申し込もうとしたが、既に満席で締め切られていた。
みんな受験生と言ったら戦いだものね。どの塾のどの先生の講義がいいか、前もって調べて申し込むのだ。私みたいに、何の情報ももたずに乗り込むなんて、その時点で失敗だ。
2学期の日本史のテスト、今まで平均点がやっとだったのに、大した勉強もせずに高得点がとれた。論文形式のテストではなく、いわゆる知識の丸暗記レベルのもの主体だったから、あのちょび髭先生の講義だけでするすると鉛筆が動いた。
受験に向けた心意気の低かった私に、結果はついてこなかった。あたりまえだ。そして、単なる暗記物は繰り返さなければ忘れるのも早い。
私が覚えているのは
「人々殺し合い 『ひとびところ(1156)しあい』 保元の乱」1156年ー保元の乱
「人々ご苦労 『ひとびとごく(1159)ろう』 平治の乱」1159年ー平治の乱
そして、なにかと先生が連呼していていた
「あなたの名はながとし 名和長年」
って、私はその人がどんな功績を残したのかも忘れた‥‥‥。