私はとっくに更年期を過ぎているけれど、そのころ悩まされていたのが「めまい」だった。

 

 実は20歳の頃、既に襲われていた。両親も寝静まった夜遅い時間、帰宅すると、居間でいきなりめまい‥‥‥。とにかく立っていられない。そのまま横になっていると、これまた学生生活エンジョイ組の弟が帰ってきた。

「大丈夫?」

と言われ、

「私の部屋から掛布団だけ持ってきて」

と言ってそのままそこで化粧も落とさず、着替えもせずに寝た。

 

 真夜中、目が覚めるとすっかり良くなっていて、自室に行った。両親は気づかず、私も若かったからそのままにして、15年近くが経った。

 

 30代半ば、あのめまいが再びやってきた。身体を地面に垂直にしようとすると吐き気が襲う。それより、寝返りも打てない。頭を少し動かすだけで天井がぐるぐる回る。目を固く閉じ、身体をぎゅっとして布団の中にいる。トイレだけは這いつくばって何とか済ませる。

 

 それは4年に1度くらいの割合で私を苦しめた。それでも考え方の豊富な(?)私は、

「あら、オリンピックだわ。それに長生きしたとしてもあと10数回」

と前向きにやっていた。

 

 そのうち50歳手前位にその回数が頻繁になった。月に何度もやってくることもあった。それは、突然やってくる。と言ってもお出かけしていて駅のホームから転落してしまう、とかではない。前の晩、

「ちょっと怪しいなあ」

からの翌日の案の定、だ。

 

 以前からの症状だったので、私の中で更年期と結び付けることができなかった。更年期というと「イライラ」とか「ホットフラッシュ」「うつ」があまりにも有名。

 

 回数が増え、寝込む日々も長いときで1週間、薬も効かないとなるとメンタルもやられてくる。友だちと会う予定は立てられない。相手がお仕事をしているお友だちだとなおさらだ。私と会うためにわざわざお休みを取ってくれたのだから。せめてグループにして、

「もし、ドタキャンになったらごめんね。キャンセル料が発生するようであれば必ず払うから、私抜きで楽しんで」

の条件付きにする。旅行も国内ならば、まだ泣く泣く諦められるが、海外は絶対無理だ。それだけでストレスにもなっちゃう。

 

 それまでにも内科、耳鼻科で診察をしてもらったが、『メニエール』かな?で、はっきりしたことはわからず。それに、症状が出ている間は起き上がれないのだから、治まってからお医者さんに行っても診断は難しいようで。

 

 あまりに頻繁になってきたとき、めまい専門のお医者さんを友人が紹介してくれた。たまたま夫の休日の土曜日に症状が出た。起き上がるのも億劫だったが、このチャンスは生かさねば、と彼の運転で1時間近くかけてその先生を頼った。

 

 『メニエール』と『良性発作性頭位めまい症』の複合と診断され、その場で、寝ながらあっち向いて30秒、こっち向いて30秒、この体位で30秒、みたいな体操?をやった。その日の午後、多少は楽になった。けれども発作が常に夫の仕事休みに起こるわけでもなく、悩みは消えることはなかった。

 

 「死ぬまでこうやって付き合うのか‥‥‥」

と思ったけれど、60歳を過ぎた頃からそれは回数も減り、症状も軽くなってきた。たま~にちょっと気分が悪いときもあるが、日常生活であればこなせるようになった。あれは更年期だったのではないか、と思うようになった。更年期とは、自分の弱い部分(私の場合、三半規管?)が特に症状に出るのかな?と思った。

 

 本当に元気って有り難い。そういえば、50歳の頃、友人の1人が

「早く還暦を迎えたい」

って言った。周りのみんなで

「えっ?どうして?」

と驚いたら

「60歳になると元気になるらしいって人から聞いたのよ」

だって。そりゃあ、腰が痛いだの肩が凝るだの、体力筋力が落ちただの、その他検査結果の値は少しずつ悪化の一途なんだけど、私にとってはある意味間違いでもなさそうだ。

 

 更年期ならば、いつか落ち着くよ~~~。