今まで何回かテレビに映ったことがある。

 

 友人の依頼で、まあ「サクラ」になったり、公開放送を見に行ったり、小学生時代にNHKの『おとうさんと遊ぼう』なんて番組にも出た。

 

 が、まったく予期せず被写体になったことがあった。それは、ある百貨店の閉店セレモニーでのことだ。そこは私が小さい頃から母に連れられて買い物に出かけたところ。もちろん日常のお買い物は近所のスーパーで十分だが、よそ様への贈り物やら、特別の日のためのオシャレなお洋服など、その百貨店を利用した。公共交通機関を利用して訪れるので、母に

「これを着ていきなさい」

と言われ、ワンピースだったりエナメルのお靴だったりと少しめかしこんでいた。

 

 結婚後も実家よりずっと近くなり、ずいぶんと訪れた。そんな思い入れのある百貨店だったのだ。そして、たまたまその時の店長さんがママ友のご主人。大勢の仲間の中のご夫婦だ。もちろん何度も一緒にお酒も楽しみました。そんなことから、初めて『閉店セレモニー』に行ってみることにした。「初めて」それは当然です。行ったこともない百貨店が閉店してニュースになっても

「へぇ~そうなんだ」

と何の興味もないもの。

 

 混みあうことを想像し、閉店の30分以上前に行った。お花を用意した。セレモニーでお渡しするなんてできないのはわかっていたが、奥様であるママ友にお会いできれば、と。当時も既にガラケーが存在し、メールで連絡を取るつもりだった。

 

 ところが、館内をフラフラしていたら、偶然そのパパ友、いやいや、店長様にお会いした。花束を抱えている姿を見られ

「奥様にお渡しできれば、と思っていました」

と伝えると、

「せっかくですから私がいただきたい」

と笑顔で受け取ってくださった。

 

 閉店時間には、すごい人の数で、ごった返していたと言ってもいいくらい。私は道を隔てて建っているビルを背にし、いい位置をキープできた。が、見えるのは人の頭ばかり。それでも店長ご挨拶はしっかりと聞き取ることができた。

 

 目をつぶれば、小さい頃母とお買い物をした光景が思い出され、

「地元の皆様に感謝いたします」

という優しい店長さんの声に、そのお顔が浮かんだ。ほっこりした気持ちと、寂しい気持ちを抱え、自転車をとばして帰宅した。

 

 その日の夜、布団に入ってから、いきなりメールの音。それは店長の奥様からだった。

「今、テレビを見ていたら、閉店セレモニーで主人のあいさつの後、蛍の光が流れる中、beachanが映ったよ。しかも一人アップで、数秒!すごいよね?4チャンネルだからね」

 

 私は急いで布団からはい出て、翌日の日テレの朝番組の録画予約をしたよ。映るかどうかは分からないけれど。


 そしたら翌朝、映った、映った、シミも皺もはっきりと。数秒だけど、長く感じた。チャリ圏内の百貨店、化粧もほどほど、着ている服も普段着、それらが地元のおばさん感を醸し出していたのだと思う。

 

 もしも日テレのカメラマンさんが

「この人はただの地元民ではなく、何か他にも強い思いをもってやってきている人だ」

と感じて、私にカメラを向けたのならば、あなたはすごい方です。

 

 そういえば、友人と2人で街に出た時、あるニュースについてインタビューをうけたこともあったわ。それも放映された。そして、やっぱり日テレだった。

 

 私って、日テレウケする容姿なのかしら?