その昔、夫婦で友人の結婚披露宴に招待された。
新郎の友人の席として同じテーブルの男性、私も何度かお会いしたことはあった。
彼は独身で、昔で言うソース顔。好みはあるでしょうが、一般的には整った顔立ちです。ところが、うんちく大好き、おしゃべり男性。
「○○の××っていうお店 知ってる?」
に始まり、
「そこの△△がうまいんだ」
とか
「この名前の由来はなんとか」
とか。
芸能人の噂話とか、ホントかウソかわからないけど、とにかくみんなの前で披露する。そして知ったかぶりも得意でね。私、好きじゃないタイプ。でも何だか憎めない人、人のためにちょこっとした気づかいもする。それゆえ、周りにお友だちはいるわけです。私のその日のお席は彼の隣だった。
披露宴ということで色々な方のご挨拶があり、彼もおとなしくしていたが、乾杯のあと、お料理が運ばれてからは、彼のトークが始まった。最初はその丸テーブルのメンバー全員が聞いていたが、それぞれ飽きてきたのか、お隣さんとしゃべるようになった。夫も普段一緒の私と会話するより、久しぶりの友人と話すことの方が楽しかったようで、反対側を向いてしまった。私が彼の相手になるしかなかった。
メイン料理のステーキが運ばれてきた。彼は
「beachan、こういうのは熱々のうちに食べるのが一番うまいんだ」
と言って、さっさとナイフとフォークを使い始めた。私は、あれっ?と思った。彼はものすごいスピードで肉を口に運んでいた。
その時、ボーイさんが彼のステーキにソースをかけに来た。彼のお皿には付け合わせのお野菜だけでお肉はすっかり消えていた。
その時のボーイさんのなんとも表現できない顔が私には忘れられなくて。一瞬不思議そうな顔をされた。
「まさか、ステーキののっていないお皿を運んだなんてことないよな‥‥‥?」
肉汁がわずかに皿を汚していた。その直後、笑いをこらえたようでもあるが、ボーイさんにとっては、相手はお客様には変わりない。スマートに軽く頭を下げて、私の隣に移り、ステーキにソースをかけてくれた。
「彼の隣か」
と席次表でテンション下がった私だったが、笑いをゲット出来、ありがとうございました。ちょっとおしゃれをし、美味しいものを食べ、ご挨拶と上手な歌を聞き、綺麗な花嫁さんを見る。
なによりめでたき佳い一日だった。