父が92歳、母が86歳の時、初めて介護認定とやらを申し込んだ。父が亡くなる5か月前のことだった。いざという時、急に何かお願いをしてもサービスは受けられない。そのためには前もって登録(?)が必要だと、義妹の話を聞いて、事を進めたのだ。
社交的な父は、それならば、とデイサービスに通うことにした。同い年くらいの方とのおしゃべりを楽しみに。でも行かれたのはほんの数回だったかな?
最後の最後まで家のこと、自分のこと、やってきた。庭の木を伐り、括って可燃ごみの日に出す。新聞紙の回収の袋もしっかりと長方形に立ち上がっている。読み終わった後の新聞紙、我が家はぐちゃぐちゃで反省する。父は几帳面だったな。洗い物も父の担当だったし。
最近問題になっている高齢者の免許返納についても
「そういえば免許はどうしたの?」
と尋ねたら
「もうとっくに返納したよ」
と言われた。80歳の頃のことだったらしい。今では周りが助言しても聞く耳を持たないと、頭を悩ませる方が多い中、なんとも有難いことである。確かに、地域的な理由はあると思うが。
10年以上も前、私が50歳になったかならないかの頃だった。友人から長野県佐久市に『ぴんころ地蔵』があると教えてもらった。
「元気に長生きし(ぴんぴん)、寝込まず楽に大往生(ころり)したい」
という願いを成就してくれるお地蔵さん、として人気スポットになっているらしい。
「beachanは、まだ早いわよ」
と言われながらも夫と2人で行ってみた。確かに私たち夫婦よりずっとお年を召した方が多かった。そこで私たちはお土産として『ぴんころ茶』を買った。
何しろ父がこれを喜んだ。今までどこかに出かけてお土産を買ってきたことは数多くあれど、とびっきりの笑顔で受け取ってくれた。もともとお茶の好きな父、さらにジョークの好きな父はこのネーミングも気に入ったのかもしれない。それからしばらくは実家に行くたびに
「ぴんころ茶、飲んだよ」
の言葉が聞かれた。
亡くなる3日前に覇気のある声で弟と電話で話したそうだ。私も2日前におしゃべりした。妹の付き添いで緊急入院し、病院滞在時間は丸1日にも満たなかった。まさか、ぴんころ茶の効果だけではあるまい‥‥‥。合掌。