父が亡くなった数年前のこの時期、そろそろ喪中はがきのことも考えなくては‥‥‥と思っていた。その矢先、私たち姉弟妹のグループラインで、弟から
「父は享年93ですか?94ですか?」
という質問が来た。なになに、父の亡くなった年齢まであやふやになってしまったのかい、長男よ、しっかりしてくれい!と思った私は
「92ですよ」
と即座に返答した。
それでも気になった私は早速調べる。享年は数え年、一方行年が満年齢らしい。さらに喪中はがきの享年は、亡くなった年プラス1歳、その年の誕生日前に亡くなった方の場合はプラス2歳となるらしい。そうか‥‥‥。だから弟も聞いてきたのか。全く知らなかった。ということは父の享年は94になるのだろうか‥‥‥。(宗派によって違うという説あり)
妹もその後ラインに参加し、父の野位牌の裏側の写真まで送ってくれた。こんな時、丁寧な妹は大活躍する。そこには「行年 九十二歳」と書かれていた。
確信の持てない3人は
「葬儀屋さんに聞くのが一番かも」
と意見がまとまった。父が亡くなってから、担当者さんには何かとお世話になった。従来なら、葬儀屋さんは通夜告別式に関わることだけなのだが、なんでもお聞きすれば応えてくださる。何しろコロナ禍で通常の葬儀を行うことができず、異例づくめだった。その後の法事などでもどうしたら良いかわからないことも多く、相談の回数も増え、間柄も親密になった。「仕事(商売)度外視」で、教えてくださった。
外交役の弟が聞いた。最近では「享年」の解釈があいまいになっているので、満年齢を記載するのが良いです、とのことだった。それにしても私は「享年」はよく耳にするが、「行年」は馴染みがない。一方で亡くなった年齢に関しては「行年」が一般的ということだ。変なの!確かに最近の喪中はがき
「〇月〇日 父○○○○が ○○歳にて永眠いたしました」
という文章が多い。「享年」「行年」そんな言葉は一切書かれていない。
最後に弟がラインで
「3人もいれば大抵のことは片付きますね。『三本の矢』とは良く言ったものです」
と締めくくってきた。私はめっちゃ気に入ったよ。毛利元就の『三矢の訓』を持ってくるとは‥‥‥。
「一本ではすぐに折れてしまう矢でも、三本集まれば折れない」
と。妹は
「私は二分の一本で」
なんて控えめに言ってきた。私の頭の中にはそんな慎ましい考えはこれっぽっちもなかったわ。第一子の姉というのは恐ろしいものです。
「二分の一本じゃ、意味ないよ」
冗談の好きな父は
「享年でも行年でもなんでもいいよ」
なんて言いながら、3人が仲良く力を合わせていることを喜んでいるに違いない。なんたって
「兄弟姉妹仲よく」
が口癖の父だったもの。