私がOLとして働き始めた頃、「お茶くみは女性の仕事」という風潮がまだまだ根強かった。ある程度の仕事は任されたし、一人で泊りがけの出張もした。それでも10時には日本茶を、3時にはコーヒーを淹れるのは女性職員だった。面倒だなあ、と思ったけれど、席を立った。新人の私に「男性もやってください」「それぞれがやりましょう」と言う勇気はなかった。同期の皆から不満を聞いたことなく、私だけかな?と思った。まあ、これも学びと捉え、何とかこなしたわ。

 

 先日、新聞の投稿欄で「お茶くみは女性の仕事ではない」といった内容を目にした。投稿なさったのは私と同年代の女性だ。自分がしてきたこと、今でもそれが続いていること、相当ご立腹のご様子。そうなの?未だにお茶くみは女性の仕事なの?これには驚いた。

 

 でも時代は流れているよ。私たちの頃とはだいぶ変化しているように思うのだが。まだそんな考えがあったとしてもいずれ、なくなっていくよ……って、甘いかなあ?

 

 今からどれほど前だろうか?ママ友のお一人のお話。彼女は男の子3人のママだった。次男君がどうもほかの2人に比べて勉強が苦手だという。(いやいや、周りから見たら3人とも十分優秀なお子さんたちでした)その彼が、高校卒業後の進路で悩んでいたらしい。勉強はあまり好きじゃない、かと言って専門学校でやりたいこともない……。が、ママさんが言うには

「自分が留守の時に洗い物をしてくれたり、時にはシンク下の鍋釜をきれいに整頓してくれたこともあった」

とか。そこで

「あなたには家政学部があるじゃない!」

と言ったそうだ。すると彼の一言。

「俺が好きでやっているとでも思ってるの?誰もやらないからやってんじゃん!!」

私はそれを聞いて思わず拍手しちゃったよ。そう、誰もやらないから自分がやった。やりたくないけど、自分がやった。

 

 小さい頃、母に

「女の子なんだから」

と言われてよく手伝いをさせられた。一つ下の弟は「男だから」という理由でその量は私の比じゃなかった。私はそれが嫌だった。なんか、弟はずるいと思った。将来母になることが出来たら、「男だから」とか「女だから」と言うのは絶対やめようと思っていた。実際、娘に性別を理由にお手伝いをさせたことはなかった。

 

 今では分かる。母は、そういう時代に育ち、父母からそのようにしつけられたであろうこと。そして、弟はずるいわけじゃなかった。小学生が自ら

「お姉ちゃんばっかりかわいそうだから、僕も手伝うよ」

なんて言えないよ。

 

 私の好きな言葉に「しなやか」という形容詞がある。「しなやかに生きる」ってこういうことかなって思う。女だからやっているんじゃない。男だからやらなくていいというわけでもない。誰もやらないからやった。人としてやった。それでいい。