友人と断捨離の話になる。
「60代で断捨離は、まだ早いわよ~」
という人もいるし、
「70代になったらお片付けは、体力的に無理だから、やるなら今!」
とも聞く。
60半ばに差し掛かり、タンスやクローゼット、押し入れを覗いた。何度も見てきた光景だ。そのたびに、出してもみた。が、ちょっと配置を変えて戻す……を繰り返してきた。今回は見るだけじゃなく、もう一歩踏み込んで、捨てるものを探すつもり。
紙袋に入った色紙が出てきた。今から40年も前の私たちの結婚式の時、披露宴会場の円卓それぞれに色紙とサインペンが置いてあり、それにみなさんがメッセージをくださったのだ。お片付けアルアルだが、こういうものを見つけると時間はあっという間に経っていく。友人の顔が浮かぶ。すでに亡くなられている上司、恩師もいらっしゃる。わざわざ田舎から来てくれた親戚に思いを馳せる。色紙に着いた茶色い点々としたシミが年月の経過を再確認させる。
そこには家族のものもあった。両親から手書きのメッセージなんて、今までこれだけだ。
「初心を忘れるな」という父。「初心」そのものを忘れた自分がいる。その横に「20代は愛、30代は努力、40代は忍耐」と母の字が並ぶ。そうそう、母はこういうのが大好き!
結婚後、数年経って、母に色紙の話をした。
「おかあちゃん、色紙に書いてくれた言葉、あれはどこかで見聞きしたの?まさか、自分で考えたんじゃないよね?」
すると、どこかで見て、日記に書き留めておいたらしい。で、本当は「50代はあきらめ」と続くらしいが、結婚式にそこまで書くのがためらわれて、40代までで終わりにしたんだって。
さて、私も還暦を迎えた時、あの言葉を思い出し、
「60代は、何だろう?」
と母に聞いてみた。既に85歳にもなっていた母は
「もう忘れちゃったよ。どこかに書いてあると思うけど」
と言った。そこで私は
「50代があきらめだったら60,70,80とずっとあきらめしかないじゃん」
と言って、二人で大笑いした。
そしたら、先日ふいにネットでこの言葉を見つけた。なんと「60代は感謝」なんだって。いやぁ、深いわぁ。深いけど、一旦あきらめたら、そこから感謝に気持ちを180度変換させるの、私には難しいわ。子供達も皆独立し、夫婦2人だけになったら、何だか不平不満が増えてる気がするし。あらやだ、「ふうふ、ふたりになったらば、ふへい、ふまんがふえている……」韻を踏んでるじゃないの!ここで一旦自画自賛。
そして、ほら、やっぱりこの色紙は、捨てられない。元に戻した……。何年か経ったら、スマホで写真撮って処分できるかな。