母の炊いたお赤飯は絶品だ。電気炊飯器や圧力釜ではなく、蒸し器の正統派だ。私は、時間に余裕ができたころ、母に教えてもらおうと思うようになった。特別な作り方や材料ではないから、ネット検索すればおそらく同じ味は出せるはず。だから、「母の味を受け継ぐ」ってのに憧れたのかもしれない。

 

 わざわざ蒸し布を買い、小豆よりずっと高価なささげというお豆も用意した。ところが、母に習ったとおりにやったのに、結果は大失敗。ぐちゃぐちゃに柔らかくなってしまったのだ。もち米を一晩漬け置きする、その時間が長かったのか、水の温度がいけなかったのか?いやいや、母はそんな細かいことは言っていなかったよなあ?そこから数回試すもダメだった。

 

 実家に行って母に

「やっぱり軟らかくなっちゃう」

と報告していたら、それを聞いていた父が言った。

「蒸し器の下の水が上がっているんじゃないのか?」

確かに私の蒸し器は母のそれと比べると小さかった。同じ量を作ろうとするには無理がある。私は、途中で水がなくなってはいけないと、下の鍋になみなみと水を注いでいた。そうか!それだ!もち米は蒸されるというより、茹でられてしまったのだ。

 

 その後、水の量を調節してやってみたら、成功した。父のアドバイスも良かった。料理なんてやったことのない父だけど、米屋として何十年も餅つきのもち米をせいろで蒸す作業をしてきたからなあ。

 

 何回かやっているうちにその作業にも慣れが生じ、ある時蒸し布を広げた時、その一部を五徳に付けてしまった。何やら焦げ臭いにおいが漂ってきて気づいた。えらいショック!キッチンタオルでも代用できると聞いたけど、わざわざ母の真似して買った蒸し布なのに……。

 

 悲しく思いながら、丁寧に布を広げてみたらなんと、その形がハート型にくりぬかれていた。そこから何年も私はこの蒸し布を大事に使って母直伝のお赤飯を作り続けている。

こんなにきれいにハートができていましたハート