夏休みももう終わり。新学期が始まる。
私が小学生の昭和40年代、学期の始めに1人1枚雑巾を持っていくことになっていた。記名の必要はなく、段ボール箱に集めて、クラス皆で使用するための物だった。
私の母は
「タオルを折りながら拭き掃除に使うのはだらしない。必ず縫うんだよ」
「ミシンで縫うと固くなって絞りにくいから、手で縫うこと」
「使い古したタオルはよく水を吸って雑巾として最適」
「新しいタオルを雑巾にするのはもったいない」
と言って、よく針を持ち、時間があれば雑巾を縫っていた。だから、学校提出用にわざわざ用意されることはなく、常にたくさんあって
「どれでも勝手に持っていきなさい」
ってな具合だった。
母の言うことは理解できたが、いつの頃からか、恥ずかしくなった。だって、明らかにみんなのものと違う。私のは、よれっとしていて色も真っ白とは程遠い。家では一番きれいなものを選んできたはずなのに……。集める時には誰にも見つからないようにそっとダンボールの下の方に隠すように入れた。
我が子が小学校に通うようになり、やっぱり雑巾を求められた。もちろん母の言いつけを守りたかったが、私は新しいタオルを使って雑巾を縫い、それを持たせた。からかわれるんじゃないか、いじめられたらどうしよう……。「タオル1枚がもったいない」という時代は過ぎたよね、と自分に言い聞かせて。
今や雑巾はスーパーやドラッグストア―で買うことができる。娘が将来小学生の母になることができたら、その時彼女はどうするだろうか?
多くの女性が仕事を持つ時代となり、雑巾を縫う時間もないほど小学生ママさん達は忙しいだろう。祖母のような教えは、時代にそぐわない話、遠い昔のこと、として消えていくのだろうか?いや、既に消えているかもしれない。