長男が高校生の時のことだ。ある日、数学の授業の話を始めた。大体、そんな事珍しいから、私もかなり真剣に聞き始めた。
「同じクラスに同じ誕生日の人が最低ひと組存在する確率はどのくらいでしょう?」
先生の設問に、生徒たちはかなり低い確率を答えたらしい。それはそうだよねえ。1年は365日もある。ど素人の私は、366人いれば、必ずひと組はいるよね、って思った。
実際はかなりの確率で存在し、50人の息子のクラスにも誕生日が同じ人がひと組いたらしい。興味をもった私は、
「それで、どういった考え方をして、そうなるの?計算式は?」
などと聞いた。彼は一言
「わかんねえ」
そこ!違うだろっ!肝心要の部分を頭に入れないでどうする!高い学費払っているのはこちらです。この、私の知りたい欲求、満たしてくれ!
最近は便利だ。ネットで調べればよい。それは『誕生日パラドックス』といって結構有名な話のようだ。すっかりさび付いた頭を何とか働かせ、論理・計算式はかろうじて分かった……気がする。その計算式によれば、23人の人が集まれば、約50%の確率で誕生日が同じひと組が存在するって。50人ならば90%以上。パラドックスとは、「矛盾しているようで実は正しい説のこと」だそうだ。
そういえば、夫と私の弟は年こそ違えど、誕生日は一緒。そして、私の父の85歳の誕生日に孫が生まれた。父はちょうど85歳違いの初ひ孫誕生にたいそう喜んでいた。信じられないけど、結構小さな集まりの中に誕生日が同じ人っているんだね。
これが『パラドックス』かぁ。
さてさて、父は初ひ孫との初対面で
「すごいなあ、これから85年後の世の中を見ることができるんだよ」
ってボソッとつぶやいていた。