長女が中学校に入学し、5月の中間テストのことだった。「初めてのテスト、どうだったかな?」と思いながら昼ご飯の支度をして彼女の帰宅を待っていた。
「国語でどうしてもわからない問題が出たけど、時間ギリギリになってわかったから、ラッキーだったよ」
そう言って、彼女は興奮気味に帰ってきた。
「『能ある□は爪を隠す』って問題なんだけど」
それを聞いた途端、私は「ああ、もう絶対にバツだ」と分かった。そんなの考えて正解を導き出せる問題じゃない。知っているか、知らないか、だ。それなのになぜか娘は自信たっぷりだった。
「熊っていう漢字の下の方の爪みたいな点々を隠すと、能になる」
「爪みたいな点々」って、それは「れっか」とか「れんが」というきちんとした部首名があるんですよ。既に娘の国語力の低さが顕わになっていた。「なるほど~。能ある熊は爪を隠す」か……。
一方で、私は娘のユーモアに富んだその力に驚いた。本人は真剣に考えたことと思うけれど。そして、もちろん、返された答案にはバツがついていたけれど、私は事あるごとにママ友たちに披露して褒められたよ。
「さっちゃん、すごいね。先生も半分ぐらい点数くれてもいいよね」
将来、この能力、どこかで生かされますように……。