「ねえ、ヘ長調って何?」

「長調と短調がわからないんだけど……」

弟にとっては初めての期末テストの前日、そんなことを私に聞いてきた。ちょっと待ってよぉ、テストは明日だよ。小学校で何やってきたのさ!説明できなくはないけど、私だって明日テストだ。

 

 小学校時代、音楽・体育・美術(図工)なんて、ペーパーテストはなかった。それが、中学生になり、中間だ、やれ期末だ、とテストがやってくる。私は小学校6年生までピアノの個人レッスンを受けてきた。だから、試験対策なんて音楽に関しては必要なかった。せいぜいモーツアルトだとかバッハが作曲した曲名を覚える程度で済んできた。それなりのお月謝代だって両親の負担になったはずだ。そう考えたら、弟が気の毒に思えてきた。ちょっと付き合ってあげよう……。

 

 「長調は明るい曲、短調は暗い曲」

「暗いってどういうこと?」

「う~ん、悲し気とか寂しい感じとか……」

「じゃあさ、『チューリップ』の歌を悲しそうに歌ったらどうなるの?それは長調?短調?」

えっ?そ・こ・か・ら?

そのあと、私の記憶は飛んでいる。

 

 時が経ち、私たち3姉弟妹も50歳を過ぎ、集って思い出話もするようになった。そこで、あの、忘れていた「音楽のテスト」の話が出た。そして、私は衝撃の事実を知ることとなった。

 

  当時の音楽テストでは、試験範囲の中の楽曲の楽譜が虫食いになっていて、そこに音符を書き入れる問題が必ず出題された。そんなの私にとっては「への河童」……なんて言葉、分かる世代はどこまで?それじゃあ、「朝飯前」……も同じようなもんだわ。とにかく簡単でした。

 

 さて、弟はどうしたかというと、音符「ド・レ・ミ・・・」を数字に置き換えて覚えたらしい。「ド」は1,「レ」は2,「ミ」は3,というように。確かに、音楽が不得意な彼にとってはドレミで覚えるより、数字の方が覚えやすいかも。円周率みたいにして……。って、それこそ役に立ってないよねえ。こんなの音楽じゃない!音楽の授業は大事だ。でも私はこのテストの出題方法はいけないと思う。

 

 今では音符が読めなくても楽器を弾ける(吹ける)。楽器を操れなくても作曲できる。そして、歌が上手な人は十分に「音を楽しんでいる」だろう。

 

 弟には失礼だが、それこそ無駄だったね。役に立ってないよ。ただ、そうしてまで点数をとり、成績に繋げたかった努力と、その発想力は、たたえたいと思う。

実際役に立ってないと思う授業

 

 

同じネタで投稿する

 

他の投稿ネタを確認する