小学四年生の三学期終わりの学級会だったか、道徳の時間だったか……。その日の議題は「お友だちのこんなところを直したらもっといいよ、を指摘する」だった。さすがの昭和、今の時代だったら、絶対にそんな議題を提案する先生はいない。「お友だちのこんなところがすごい、を言い合いましょう」になる。
最初は下を向いていた私たちも先生の
「新しい学年の目標にもなります」
みたいな言葉に促されて、ポツリポツリと手を挙げ始めた。と言っても「○○君は忘れ物が多い」とか「△△ちゃんは爪を噛むクセをやめたほうがいい」とか「××君はいつも掃除をさぼっている」とか、そんなものだった。
私は手を挙げて発言するのは得意じゃなかったけれど、勇気を振り絞って言いたいことを言ってみた。
「石田君は女子の前ではすごく強く何か命令したりするけど、男子の前ではモゴモゴと言いたいことをはっきり言わないので、みんな同じ言い方にした方がいいと思います」
そしたら誰からともなく
「そうだ!そうだ!」
の声が上がり、手拍子まで加わり、クラス全体リズムの取れた大合唱となってしまった。私はすぐに石田君が泣いているのに気付いた。焦った。先生がすぐにやめさせた。
私の言い方が悪かったのかなあ?
「石田君、ごめんね」
って今でも思っている。その時すぐに謝ることもできず、放課後になっても何もできない私だった。そして今に至っている。今後、同窓会があったら……なんて思うけれど、それもどうなのか?
今となっては、石田君が私みたいに過去の体験を細かく覚えているタイプじゃないってことを願うばかり。
