小学校、中学校、高校と学期の終わりごとに、通信簿をもらった。成績結果と出席記録、先生からの一言などの報告書だ。学区によっては「あゆみ」とか「わかたけ」とか「まなびのたより」みたいな洒落た名前もついているようだ。1,2学期は、親の印鑑をもらって先生に一旦戻す。高校の頃は親にも見せずに、勝手にハンコを押して持って行っちゃったりしたけど、何にも言われなかった。
実家の母は私たち子供3人分のこれらを見事に保存している。そのころは評価の数字ばかり見ていたが、今ではそんなのどうでもよくて、先生の所見欄が面白い。細かい字でぎっしりと欄が埋まっている。しかも昭和40年代のそれは、良いところも悪いところも直球でやってくる。
☆図画は表現に独創的なものがうすい感がある。もっと生き生きとした表現が必要。
☆自分の得意でないものにも努力をするようお教えください。
☆神経質な点が多分にある。
☆慎重すぎて自分の考えを他に伝えることに遅れます。判断力を今少し早くするようにしたいものです。
☆話し方が回りくどい。
☆決まりを守ってほしい。
☆積極性に欠ける。
私たち3人の短所だけ1部を抜粋してみたが、なかなかである。
私自身の子どもたちの時にはめったに悪いことは書かれていなかった。書いてあったとしてもものすごく柔らかく……。私はたとえ子どもの欠点が書かれていても冷静に受け止められると思うから、書いてほしかったなあ。先生方がわが子をどのようにとらえていたのかを知りたかったなあ。時には「ドッチボール大会でキャプテンとして頑張りました」なんて文章があって、(キャプテンになったことなど、子どもの口から聞けるわ)って思った。
だっていつだったか、誰だったか忘れてしまったけれど、学期末に全員に紙が配られて
「今学期、自分がすごく頑張ったと思うことを書きなさい」
と先生に言われたらしい。そして、それがそのまま通信簿の所見欄に書かれていた……。
最近の学校現場はいろいろな問題を抱え、先生方がとても忙しい。少々マイナスな言葉を書こうものなら、教育委員会という言葉をちらつかせ、怒り狂うモンスターペアレントもいるという。もちろんほんの一部の親だとは思うけれど。そして、生徒30人の所見を書くのは大変な作業とは容易に想像がつく。けど、子どもに書かせたものをそのまま載せるなんて、それはないんじゃないかな。私は先生の正直な思いが欲しかった。
