ある日のバスの中での出来事。30歳前後の女性が乗ってきた。するとその女性が優先席に座っていたやはり30歳くらいの女性に向かって

「妊娠してるんですけど……」

と言った。すると座っていた女性が

「私だって妊娠してるんです」

と言った。「だって」はダメでしょ。「ごめんなさい。私も妊娠していて辛いので座らせてもらってます」くらいにすればいいのに。そのやり取りに私の目はテンでした。その後、実際どうなったかというと、そのうしろに座っていた80代くらいのおじいちゃんが黙って立ち上がり、移動していった。

 

 別の日にこんなこともあった。バスにしては珍しくとんでもなく混んでいた。ところが、私の立っている位置から少し離れたところの座席が空いているのだ。そしてその前には70代くらいの女性が立っている。スラリとして、これからハイキングにでもおでかけなのか、リュックを背負ってスポーティーな出で立ちで。私は(ここまで混んでいるのだから、座ってほしいな)というオーラを発しつつ、顔はにこやかに微笑んでその女性を見た。すると目が合い、涼しげな笑顔で手のひらを上に向けて「どうぞ」のしぐさをされた。(違う違う、座りたいんじゃないの。それにこのぎゅうぎゅう詰めの中、どうやってそこまで移動できるの?あなたが座って、1人分のスペースをつくってくださいな)

 

 バスって最近一人がけの前向き椅子になった。なんか、私の小さい頃は電車みたいに、全員横並び椅子だった記憶があるけれど。そしたら空いている席の前の人だけじゃなくて周りの人も座りやすい。電車では、前の人が座る気配がなかったら、ちょっと頭を下げてその横の人とかが座ったりしている様子も見かける。でも一人がけの前向き椅子だとその場の人しか座れない感じがする。

 

 優先席や席の譲り合いについては、以前からずっといろんな意見が飛び交う。私は、今後お席を譲られたらお礼を言ってすぐに座ると思う。だが、ある年齢を境に、(私はそんなおばあちゃんじゃないわよ!)という気持ちになるのだろうか?私もいつか、席を譲られたくない時が来るのだろうか?それでも私は、

「ありがとうございます」

と言って笑顔でさっさと座るかわいいおばあちゃんが目標だ。間違っても

「電車やバスの中で足腰を鍛えています」

と言うのはやめたい。