大切なお気に入り写真や映像データを、どのように保存していますか。「CDやDVD、ブルーレイディスクに焼いて保存しておけば安心」と考えている方も多いかもしれません。しかし、実はこれらの光ディスクに記録したデータは、私たちが思っているほど長持ちしないということをご存じでしょうか。
さらに昨今では、世界をリードしてきた国内大手メーカーが光ディスク媒体や再生装置の生産終了を発表するニュースが相次ぎました。ファイル保存はクラウドストレージが主流となり、映画などもネット配信で見る時代になったため、ディスクの販売量が激減したことが主な理由です。しかし、個人の思い出や世界中の重要なデータをどのように物理的に残すべきかという問題は、今や世界的な課題となっています。
なぜ従来のCD-RやDVD-R、ブルーレイは長期保存に向かないのでしょうか。そこにはディスク内部に使われている材料の化学的な性質が深く関係しています。
一度だけ書き込めるCD-RやDVD-Rなどのディスク内部には、シアニン系やフタロシアニン系といった有機色素の層が使われています。強いレーザー光を当てて色素を分解させることでデータの「0」と「1」を書き込み、分解された部分と残った部分での光の反射の違いを利用してデータを読み出します。しかし、この有機色素は日光や熱などの環境変化に弱く、時間の経過とともに分解が進んでデータが読めなくなってしまう欠点があります。
一方で、書き換え可能なCD-RWやDVD-RAMなどには、色素の代わりに相変化材料と呼ばれる合金が使われています。レーザー光の熱によって原子が規則正しく並んだ結晶状態と、ランダムに並んだアモルファス状態を交互に変化させ、その光の反射率の違いでデータを読み書きします。しかし、この相変化材料も熱や環境の影響を受けるため、やはり長期間の保存には向いていません。
こうした耐久性の課題を解決するために登場したのが、英国のMicrosoft Researchの研究チームが発表した「ガラス」を記録媒体として使う革新的な技術です。
この技術では、石英ガラスや家庭用の耐熱容器などで使われる身近な硼珪酸ガラスが使用されます。そこにフェムト秒レーザーと呼ばれる、超短時間の高出力光を毎秒1000万回という超高速で照射し、ガラスの内部に直接データを刻み込んでいきます。
具体的には、12センチメートル四方で厚さわずか2ミリメートルのガラス板の中に、なんと300層ものデータ層を立体的に積み重ねて記録します。観光地で見かける「ガラス内部に動物などが立体的に浮かび上がっている置物」と原理的には似ていますが、その密度と精度は桁違いです。
ガラスは熱や環境の変化に非常に強く劣化しないため、この方法を使えば10,000年以上もの間、データを安全に保持できるとされています。
デジタルデータは一見劣化しないように思えますが、それを記録するディスクや機器には必ず寿命が存在します。クラウドだけに頼るのも万全とは言えない現代において、1万年劣化しないガラス記録技術は、人類の歴史や個人の大切な思い出を遠い未来へ引き継ぐ大きな助けとなるはずです。
