子供の頃に持っていたのに壊したり、大きくなって知らないうちに親が捨ててしまったおもちゃや本、学生の頃欲しかったけど高くて買えなかった物が誰にでもあると思う。社会人になって、ある程度懐に余裕が出てくるともう一度買い戻したいとか今なら買えると当時より何10倍になった物を買った人もいるだろう。実際私も、家を建て替える時に親に捨てられた雑誌「写楽」を全巻yahooオークションで買い戻したことがある。
マナブ君は6歳から保育園に入ってきた子だった。東京の方に住んでいて家庭の都合でお母さんの田舎に引っ越してきたらしい。マナブ君は細くて自分達より頭一つ以上大きかった。普通の子より1年遅く入ってきたことと、逆に大きすぎることがコンプレックスだったのかおとなしい子であった。
6歳になるとひらがなをしっかり教える時間があった。保育園に鉛筆と消しゴムを持っていくことになるのだが、その時マナブ君が持ってきたのがウルトラマンの消しゴムだった。その消しゴムは10cmぐらいの長さで真っ白な素材のゴムに銀と赤のウルトラマンの全身が浮き上がっていた。当時うちの田舎にはねずみ色の消しゴムしか売っていなかった。おそらくマナブ君は東京で買って貰ったんだろう。そんな真っ白なその上ウルトラマンが描かれている消しゴムなんて見たことも無かった。6歳の僕は、その消しゴムが欲しくてたまらなかった。日曜日に繁華街の文房具の店行ってみたけど、売っていたのはよくあるゴム消しと今も売っている砂消しゴムと一緒になっているだけの消しゴムだけ。ウルトラマンどころか白い消しゴムすら売ってはいなかった。
それからしばらくしてマナブ君はウルトラマンの消しゴムを切って持ってきた。足の部分だった。6歳の子の手には使いづらかったんだろう。6歳児の僕が「もったいない」と思った。「なんでウルトラマン切っちゃうたんだ、俺だったら使わないで飾っておくのに」とも思った。そして他人の持っている物を「欲しい❤️」と思った最初の物だったと思う。
今でも思い出すたびにyahooオークションやメルカリ覗いて見るけど同じウルトラマンの消しゴムは発見出来てはいない。ただ6歳の保育園児の記憶である。マナブ君が大きいウルトラマンの消しゴムを持ってきたのは間違いは無いと思う。それが記憶に残っている10cmぐらいだったのか、ウルトラマンが浮き上がっていたか、ただプリントされていたの物だったか、市販されていたのか、限定のノベルティだったかも確かめようもない。
それでも生まれて初めて「もったいない」「欲しい」と思った消しゴムの同じものをいつかは手に入れたいと思い続けている。