中村義洋「ゴールデンスランバー【2010】」 | 木島亭年代記

木島亭年代記

東北在住。
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2008年本屋大賞 受賞、第21回山本周五郎賞 受賞作品。および「このミステリーがすごい」1位作品。の映画化。原作者は今をときめく伊坂幸太郎で、監督は伊坂作品を2本映画化していてこれが3本目の中村義洋。


面白かどうかというと、面白くはない。好きか嫌いかというと、嫌いではない。名作か駄作かといわれると、どっちかというと駄作の部類。せけkん一般に受け入れられるような映画化といわれると、無理っぽいというのが本音:。そんな映画であった。


どんな映画だ?


まあ要するに伊坂幸太郎ファンでもなく、中村義洋が切らないな人にとっては良くあるベストセラー映画の映画化といった感じの作品でまあ記憶にも記録にも残らないようなどうでもいい映画である。わざわざ青筋を立てて怒鳴り散らす類でもなければ(気合の入ってる人ならそうするだろうが。宇多さんみたいな人とか)、感動して泣きはらすなんてことはまずない映画だ。



原作を読んだみからすると、まあそれなりに描いているのだが、結局原作の弱点を克服するような試みはなく、むしろあまりよくない所を中心にスポットライトを当てて、こじんまりとしたTVドラマ風の映画に仕上げたなという感触だ。まあ「重力ピエロ」や「陽気なギャング」なんかよりははるかに良いのだが、中村×伊坂映画としては少々きつい部類(というか作品を追うごとに酷くなっているのは気のせいか)。


まず一部のキャスティングが今ひとつ。とりわけ主人公を堺雅人が演じたのは個人的にはミスキャスト感にあふれていた。彼の表現する“良い奴”たる青柳雅春像がなんか的外れに感じる。良い人というよりバカっぽい(特に出だし)。あと太りすぎ。せめて学生時代のシーンの時はもっと痩せてないとだめではないか。「南極料理人」の役作りで太ったらしいのだが、そのままこの映画の撮影に行ってしまったのであろうか。あとあとスケール感のなさと、練られていな脚本家ら考慮すると、結構準備期間のない映画だったように思える。もうちょっと普通の男のイメージだ。それから吉岡秀隆演じる森田森吾も、学生時代の時はまあまあだったが、肝心の最初のシーンがどうも緊迫感に欠ける。荒んだ感がないし、しゃべり方が妙にガキっぽくて気色悪い。ただ、小鳩沢を演じた永島敏行と、キルオを演じた濱田岳は非常に良かった。他は可もなく不可もない。伊東四郎と木内みどりの青柳雅春の両親はタイプキャストだったが説得力はあった。あ、そうそう原作ではポール・マッカトニー似と書かれていた佐々木一太郎を何故香川照之が演じなければいけなかったのかはなはだ疑問。


この映画の一番つまらない所はおそらくサスペンスシーンの欠如だろう。警察と青柳が追いかっけっこするシーンひとつとっても全然ハラハラしないし、ドキドキもしない。簡単に逃げ切ってしまう。青柳が電気屋や病院に行くくだりも、変装らしい変装もしない。クライマックスの投降シーンだって全然緊張感がない。これはサスペンス映画なんだから、そこをすっ飛ばしたら全然だめではないだろうか。たんあんる青春映画みたいなものを取りたいなら他に作品があると思う。あとテーマがイメージによる情報操作なんだから、その辺の描写に力を入れた方が良いだろう。し、そもそもなぜあの首相が消されたかというのが掘り下げられていない。物凄くあっさりニュースキャスターに語らせるだけでは意味がない。青柳をたぶらかす何故の女に相武紗希みたいなキャスティングするなら(ほとんど一瞬しか出てないよ!)、首相のキャラクターを知名度のある俳優で印象付けた方がよほど締りがある。


ついでに言うとラストのエンディング曲は選曲ミスではないのかね。映画の結末のティストと合わないし、普通に「ゴールデンスランバー」でいいのでは(尺の問題か?)。


とはいえ張り付いた笑顔で赤いヘッドホンをかぶり、ショットガンをぶっ放しまくる無口な刑事を演じた永島敏行と、あどけない連続殺人鬼を演じた濱田岳は面白かったので良いとしよう。それにまあ言っても、まあまあ楽しんだし。


なんか伊坂さんはもう自著を映画化しない的なことを言っているのをきいたことがあるが、賢明ではあろう。中村×伊坂映画なら(ただしこじんまりとした作品に限る)観たい気もするが・・・