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脳と私

脳についての私の考え方

来週はわが師の命日です。

一緒に脳の研究していたときに、
師は動物実験を最小限にとどめるように指導していました。
研究の方向性からして、
最大でもネズミさんたちに力を貸してもらえれば、
そのあとは工学的に実証できると考えていたからです。

最近は霊長類であるニホンザルの実験利用が制限されてきたのもあって、
小型霊長類のコモンマーモセットを利用する研究が多くなっています。
研究の方向性を考えなくても予算がつきやすいため広がっているようです。

ネズミさんたちの実験さえもちゃんと理解できないのに、
さらに複雑なコモンマーモセットを被験体にした実験は
本当に必要なのでしょうか?
昨年末、認知症の発症原因を除くお薬を見つけたという報道を
目にしました。
研究内容をみると細胞の組織上は確かに効果があるように見えます。
ただ行動レベルで本当に効果があるかは別です。
脳の機能が改善したかは薬を与えた群と偽薬を与えた群の比較だけでは、
評価できず、投薬後にネズミさんたちが自分で何をしていたかを
細かく観察し分類する必要があります。
それを考慮したうえで初めて、改善したとなるのですが、
そこまではされていませんでした。

現在の国の予算をたくさん獲得されている60代50代40代の研究者の方は
研究が進むことよりも予算を獲得することを目的にしているのが、
よくわかります。
その予算は私たちが納めている税金です。
すべての研究が即効果のあるものである必要はないのですが、
今の30代の研究現場に危機感をもっている研究者が主導できる立場になるまでは
ちゃんとした結果は出てこないでしょう。
それまでの15年くらいはこのような動物実験、特に霊長類や小型霊長類の研究には税金を使ってほしくないですね。
というよりも今の状況ではあまりにも無駄な動物実験が多いので動物実験に反対です。
師の体調がよくなるころには、
私の留学先の申請期限が切れていました。

しばらくしてから、
師から研究所に遊びに来ないかとのお誘いをお手紙で頂き、
早速手土産を持参して、師に会いに行きました。
30分くらい話していたと思います。

いきなり研究室に行き、師自ら席を1つ用意してくださり、
しばらく研究室のお手伝いをすることになったのです。

もともと脳の動作原理を調べるために脳型コンピュータを創るというのが、
以前からの師の研究目的で、それを実現するために、
イカの帰巣回帰のメカニズムや鳥類の刷り込み記憶のメカニズム、
報酬が脳に与える影響を細胞のレベルから、ネットワーク、
さらにハードウェアの実現を研究するところでした。

5年ほど、その研究室に滞在させていただき、
2002年の1月の連休に師と一緒に徹夜である本の翻訳をしていたのが、
師との仕事の最後でした。
そのころには研究の集大成として、
自力飛行ができる小型のヘリコプターが飛ぶまでになっていました。
師が興奮していたのも覚えていますし、
お家でもかなり喜んでいたとのちに師の奥様から聞くことになりました。
一緒に翻訳したときから約1か月半後に師は突然他界しました。

私はほかの先生について研究する気はなかったので、
そのまま退所し、今のソフトウェアエンジニアへとつながります。

師が生前に私にいっていたことはたくさんありすぎて、
実感するまでに時間がかかりました。
その間に古典的な自己啓発書や成功哲学もよみました。
その中に書かれていることと師が私におっしゃっていたことは、
基本的には同じことなのだと思います。
何をするにも成し遂げたいことを疑わず信じ、そのことを続ける…。

師の名文句は「愛は脳を活性化し育てる」でした。
これだけはまだ実感できずにいますけど、
そのうちに。

師が他界して今年で10年です。
今でも思います、「私は少しは役に立ったのでしょうか?」と。
先生、ほんとうにありがとうございます。
これからもみんなのそばで見ていてください。