前回No.17で、コロナ禍で異業種への在籍出向をブレコネしましたが、出向先業種を特定しないと話が上手く進まないことが分かりました。今回は、常に人手不足に困っている「介護」業界へ異業種在籍出向した場合にどのようになるのかをブレコネしたいと思います。前回の続編になります。
◆参考文献◆
「たった1枚の紙で誰でも意思決定できてしまうブレイン・コネクト」
監修:株式会社インクルージョン 著:杉村寿重/和氣俊郎/横内浩樹/平塚智文 三恵社2019年 https://www.amazon.co.jp/dp/4866931248
◆介護業界への在籍出向◆
A社社長は前回のブレコネ(17異業種への在籍出向)の後、色々考えを巡らせていました。ある日、東京商工会議所の会員向け経営セミナーに参加する機会があり、そこでコロナ禍で行われた山形の「農家と旅館のアライアンス」の話を耳にしました。
どのような話かと言うと、コロナ禍で旅行客が減少しサクランボ狩り客が来なくなった農家と、宿泊キャンセルが相次ぎ事業継続の危機に瀕した山形の旅館とのマッチングの話でした。
農家には、農家自身の課題もありました。それはサクランボ栽培の特殊性です。あの小さな実を傷つけずに収穫するのは他の果物と比較にならない程の手間がかかります。
農家は通販もやっており、皮肉にもネット通販はコロナ禍で逆に販売数字が上がっていました。その為ため、サクランボの収穫をするための人手不足が大きな課題になっていました。その状況でサクランボ農家は、宿泊客がいなくなり従業員の仕事がなくなった旅館と今年はサクランボの収穫を手伝ってもらうというアライアンスを組み、農家も旅館もWin-Winになったという話でした。
A社社長はセミナーを受けながら、「確かに農業や林業、畜産業等への異業種出向は考えられる。田舎や地方には異業種出向の可能性があるな」と思いました。とは言ってもA社が存在する千代田区一番町には農家も果樹園もありません。せめて東京23区内でも出来そうな異業種出向の相手先業界はないものかとA社社長は考えました。そして、常に人材不足に悩んでいる介護業界に目を向けました。
介護業界は医療業界とは違い、未経験者を一般に多く求めています。訪問介護の場合は資格が必須ですが(旧ヘルパー2級 or 介護職員初任者研修以上の有資格者)、施設における介護業務の場合は資格を持っていなくても業務が出来ます。介護以外の福祉の現場仕事も資格を持っていなくても出来る業務が多々あります。また若年層はもとより未経験のシニアを現場職員として受け入れている現実もあるので、希望があれば誰でも業務に就くことが出来そうだとA社社長は目を付けた次第です。
社員は雇用安定を求めます。しかし社員のモチベーションは必ずしもお金だけではありません。上記の山形のサクランボ農家の例でいえば、「実際に自分が当事者となってサクランボを摘むという体験」には、お金には代えられない面白さがあったと言います。
それは「経験」という付加価値でした。将来を考えると旅館従業員全員が地元のサクランボ摘み実務を経験していれば、今後は宿泊客にサクランボの話を深くすることができるでしょう。例えば美味しいサクランボの見分け方とか、傷つけないノウハウや摘み方などです。話題の提供が出来るということは、未来のお客様へのサービス向上にも繋がります。つまり、お金では単純比較できない潜在的なものが異業種出向には期待でき、むしろそこに着目して考え方を広めることこそが異業種への在籍出向には必要なことだとA社社長は確信しました。
また、介護問題は日本全体の社会課題でもあり、かつ誰しも親の問題ひいては将来の自分の問題として介護の経験は色々な形で自社社員にも活きると思いました。
更に介護業界はIT化が遅れており、かつITを含めた業務改善が求められながらも人手不足で現場は手が回っていません。そこにも着目し、A社スタッフが持つマネジメント手法やITスキルが介護業界で活きれば社会貢献にも繋がると思いました。
そこで介護業界へ社員を在籍出向できないかを考え、上手く行くかどうかブレコネを使って考えてみることにしたのが、今回のケースとなります。
何を、何に、どのように変えていけば良いのか、そのためにはどんな行動が必要なのか、そして今どんな意思決定をすれば良いのか。その行動ひいては意思決定で、誰がハッピーになれるのでしょうか。
◆介護業界への在籍出向をブレコネしてみた(Step1)◆
◆Step2◆
◆Step3(それぞれの行動)◆
介護業界への出向意義は、A社社員に対して本業では得られない貴重な経験が出来るメリットと、会社も社員も新たな成長に繋がる可能性があると考えました。
出向先の介護業界へは、業務やマネジメントおよびIT化が遅れていることに対して改善を進めるという貢献ができ、介護の顧客インサイトにA社の本業で持つノウハウやスキルを活用できると見込みました。
A社の今後の発展(ビジネスチャンスの発掘)にも繋がる可能性も考え、A社幹部および社員と話し合いを重ねました。
A社としては事業継続性の担保を持ちながら、相手先への多様な貢献をどのように整理し、提案をしていくか検討を重ねました。それを更に練って行くことにより、異業種への在籍出向の可能性があるのではないかと思うようになりました。そして新しいA社および社員の価値を提示し実現に向けての一歩を踏み出しました。
◆社長の意思決定◆
A社が介護業界に貢献できることは、一義的には介護現場の人手不足へのマンパワー提供になりますが、それに加えて自社製品でのIT化の促進や実装およびIoTへの対応、更には業務の自動化やロボット開発などへの推進がありそうです。
もしA社が旅行会社/旅館ホテル業あるいは理美容などの業種であれば、介護現場にホスピタリティや当事者に向き合ったサービスが提供できそうです。
A社が小売業や物流販売業であれば、介護向けの多様な商品のデリバリーや、今までになかった顧客(介護事業者、介護従事者、当事者/利用者、当事者家族等)に企画製品の提供が出来そうです。
そしてA社がどんな業種であろうとも、異業種への出向を介護のみならず福祉までに領域を広げると、A社が社会的責任を果たさなければならない障害者雇用のための当事者理解や、特例子会社設立のノウハウが逆に蓄積できるという視点もあるでしょう。
このようにコロナ禍だからこそ実現可能性が出てきた異業種への在籍出向は、将来の業務改善や業務改革に繋がる種が色々ありそうです。一義的なマンパワー提供だけで終わらず、付加価値として自社業務や製品/サービスで貢献できること、逆に顧客インサイトの発見を貰えることなどです。
そして、介護以外の出向受入可能業界として、物流、スーパー、製造現場、コロナ禍の警備業、公務員の現場作業…などもあるのではないかと、A社社長は更なる考えを広めています。
【お問い合わせ】
https://www.iri-ltd.com/ もしくは info@iri-ltd.com (担当:杉村)
【著作文責】株式会社インクルージョン(Inclusion Research Institute, Ltd.【略称:IRI】) https://www.iri-ltd.com/



