今日は先日の日本頭痛学会における頭痛診断治療の大御所 平田教授の
シンポジューム内容を列記します。
医師むけのないようですが、一般の方々にも分かりやすい内容となっています。
片頭痛の慢性化防止のため、薬剤の系統的トライを
慢性頭痛の診断・治療について獨協医科大学・平田幸一氏が解説
11月19日のシンポジウム「頭痛のプライマリーケア」で獨協医科大学神経内科の平田幸一氏は特に慢性頭痛に対する診断・治療方針について解説。片頭痛と緊張型頭痛の鑑
別診断の重要性を指摘するとともに、慢性頭痛では多面的なマネージメントが必要と強調した。
鑑別診断、特に随伴症状に注意
慢性頭痛の多くは、片頭痛もしくは緊張型頭痛であり、「明確に鑑別診断を行って治療する必要がある」(平田氏)。片頭痛の中でも多数を占める「前兆のない片頭痛」と緊張型頭痛を比較すると、前者では片側で拍動性に痛み、悪心や嘔吐を伴うことがあり、光・音・臭いに過敏、前駆症状として目のチカチカ、生あくび、不定の予知夢が見られ、運動やストレスからの解放、雑踏、寝すぎ、炎天下、飲酒などで悪化する。また、30歳までに多く、家族歴が濃厚。一方、後者は圧迫・締め付け感が症状の主体であり、悪心や嘔吐はなく、うつむき姿勢で悪化し、30歳以上にも見られ、家族歴は希薄という特徴がある。
平田氏は片頭痛の診断に関して、「片側、拍動性はもちろんだが、特に光・音過敏があり、悪心や嘔吐を伴うことに注意する。雨の日にテールランプがまぶしくて運転できないと訴える患者もいる」と随伴症状の重要性を強調。また、「前兆のある片頭痛」の視覚性前兆である閃輝暗点について、「文字が飛ぶ」(文字が読めない箇所がある)と表現する患者が多いことを紹介し、「この症状は脳過敏が原因と考えられている」と解説した。
片頭痛と食事との関連を検討した海外の報告(Pediatr Neurol. 2003;28(1):9-15 )を見ると、ホットドッグ、チーズ、チョコレートとともに、柑橘類やアジアのお菓子が悪化因子として指摘されている。また、気圧の変化と頭痛に関連が見られ、台風が接近すると片頭痛が悪化することはよく知られている。この関連について平田氏は、「南の島に台風が発生したのが1時間以内にわかるという患者もいる」と紹介し、「片頭痛には種々の因子が関与すると考えられている」と解説した。
トリプタン製剤、適切な服用タイミングが大事
片頭痛の治療に関してまず平田氏が指摘したのが、トリプタン製剤の適切な服用タイミング。トリプタン製剤は前兆期に服用しても効果はなく、頭痛発現中の服用で効果を示し、特に軽度(早期)の投与で高い効果を得られる。「片頭痛と確定診断したときが投与のタイミング」(平田氏)と言える。
トリプタン製剤の選択に関しては、剤形も含めて「患者の好みに合わせる」(平田氏)ことが原則となる。痛みのひどい患者に対し、「スマトリプタンの自己注射は朗報だった」と平田氏。平田氏らが行った研究(Neurosci Res. 2010 Sep 25 )によると、「スマトリプタンは皮質および頭皮の血管を短時間に収縮させ、痛みのスコアを低下させることが示唆された」と述べた。
このように片頭痛には頓用の薬物療法が効果を示すが、再発が問題となる。特にその誘因として重要なのがストレスだ。社会的立場・環境の変化などによるストレスに加え、薬に頼りすぎることによる薬物過剰投与、女性では月経なども関係し、慢性連日性頭痛(薬物乱用頭痛)が成立する。この成立には脳の感受性変化も寄与していることが最近明らかになりつつある。片頭痛の予防効果がある薬剤として、抗てんかん薬、抗うつ薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、ARBなどの有用性が報告されており、「片頭痛の慢性化を防ぐために、これらの薬剤を2カ月程度の期間で系統的にトライしていく必要がある」(平田氏)。
緊張型頭痛の薬物治療は、頓用としてNSAID(アセトアミノフェン)、慢性期には抗うつ薬(アミトリプチン)や筋弛緩薬が用いられ、抗不安薬のエチゾラムも有用性が示されている。群発頭痛はスマトリプタンの自己注射が著効し、慢性化することはあまりないが、「慢性化した場合は、対処が非常に大変。ステロイド投与などを行わざるを得ない場合もある」と平田氏。
最後に平田氏は、慢性頭痛では、悪化因子や誘因の除去、患者教育などをした上で薬物療法を行う必要があり、「多面的にマネージメントしなければ治らないが、患者には決して治らないと言ってはいけない」と慢性頭痛治療の難しさを強調して講演を締めくくった。
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