Rishi Sunak's strategic genius (1) | 英語学習雑感ブログ

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第1パラグラフ

The conservative party has changed Britain profoundly during its 13 years in office. One such change is that it has made the absence of chaos seem like competence and the previously unthinkable seem acceptable. A prime minister should not be a relief because he did not blow up the financial markets within a month, yet Rishi Sunak was just that. Governments with large majorities should not lose votes in the early stages of legislation, yet the fact that the new Rwanda bill passed a second reading this week was greeted as a triumph of Tory party management. It is not normal for a British government to suspend human-rights legislation, ignore international law or set Parliament in opposition to the judiciary, yet moderate Tory MPs cravenly go along with it. Britain needs stability. The Rwanda row underlines that neither Mr Sunak nor the Tories can provide it.

 

 

第1文The conservative party has changed Britain profoundly during its 13 years in office.

「保守党は、その13年の政権運営時に、イギリスを大きく変えてきている」。

 

第2文 One such change is that it has made the absence of chaos seem like competence and the previously unthinkable seem acceptable.

「そうした変化の一つは、混乱のない状態を能力があるように思われるようにし、以前、考えることができないことが許容できるように思われるようにしてきたことである」。

 

第3文 A prime minister should not be a relief because he did not blow up the financial markets within a month, yet Rishi Sunak was just that.

この文も、日本人の一部がやりがちな途中で切って、そこまでの訳語を貼り付けるという読み方をすると、誤読をします。意味が成立するのは、単語だけと日本人は考えがちですが(ほとんど多義語がない日本語がその考えを後押ししているようです)、それが同時通訳法を過大評価する、例の○教大学の教授も同じで、構造で物事を言おうとする傾向の強い英語ではうまくいかないのです。

この文ではshould not be a reliefでとりあえず意味を貼って、because節からあとも「なぜならば」という日本語に置き換えて、意味を貼り付ける方法をすると、ひどい目に遭います。

 

この難しい文ではなく、もっと優しい英文を例にとって説明しましょう。

He didn’t marry her because he loved her.

この文はbecauseの直前にカンマが不可欠と言い張る人がいますが、そんなことより、コンテクストの方が重要なので、カンマがあるなしに関係ないことをいっておきます(カンマがあってもなくても2通りの意味で取れることを示す例文がとりあえずあるということだけを指摘しておきましょう)。

一つの意味の取り方は

「彼は彼女と結婚はしなかった。なぜならば彼は彼女を愛していたからだ」。

これがぶつ切りのいわゆる同時通訳法と言われるものです。

もう一つの意味の取り方は、

「彼は彼女を愛していたから彼女と結婚したわけではなかった」。

つまり、この場合は、notがmarry herという動詞句だけを否定するのではなく、marry her because…とbecause以下の理由付きの彼女との結婚を否定するものです。このような大きな構造で意味が形成されている場合には、英文をぶつ切りにして、次々と日本語に置き換えていくという方法は不毛で、あくまでも構造をきちんと捉えることが大切なのです。特にbecause節が長大なものになる場合には、いわゆる同時通訳法は全く役に立ちません。

そして、コンテクストがものを言います。

このあとの記述に、「彼は愛と結婚は別物である;結婚は愛の墓場である」と考えていた、という記述がある場合には、最初に紹介された、ぶつ切りの読み方でかまわないわけです。

それとは対照的に、このあとの記述に「彼は銭目当てに彼女と結婚したのである」とあるならば、notがbecause節付きの動詞句marry herを否定している構造と捉える方が良いと分かります。このくらい、コンテクストが重要なのです。いまの英語教育にたずさわる日本の教育関連の人々は、あまりにも、日本語と英語の根本的な違いに目を向けていないのです。

そして、このような構造とコンテクストというものが効果を発揮するがゆえに、基本的に同時通訳というのは誤読の可能性が極めて高くなるのです。

 

「首相というものは、就任1ヶ月以内に金融市場をだめにしなかったがゆえに、安心を与える存在であるべきではないのに、リシ・スナク首相はまさにそのような存在だったのである」。

直前の文のit has made the absence of chaos seem like competenceがコンテクストとして効果を発揮もしています。

 

この文を正しく読めない日本人は多いし、正しい読み方をきちんと理解している日本人はますますもって少ないはずです。とりあえず「・・・からといって・・・ない」というパターンの日本語をnotから文末までに当てはめて、読めたような気になる人が多いだけです。それに対して、「かえり読みは死んでもダメである」などというこれまた不毛な話を吹きかける日本の英語教育者は死ぬほど多い。

 

but以下のコンテクストが強力な意味のヒントになります(この場合には直前の文の一部もその役割を果たします)。ちなみに、やってはいけないぶつ切りの同時通訳方式に従うと、次のような訳の分からないものになります。

「首相というものは、安心を与える存在であるべきではない。なぜなら、彼は就任1ヶ月以内に金融市場をだめにしなかったからである。しかしリシ・スナク首相はまさにそのような存在だったのである」。

この文の意味が分かるという人はいないでしょう。そのくらいナンセンスです。

 

第4文 Governments with large majorities should not lose votes in the early stages of legislation, yet the fact that the new Rwanda bill passed a second reading this week was greeted as a triumph of Tory party management.

「多数派を抱える行政府は、法制の初期段階で票を失うべきではないが、今週、新ルワンダ法案が第二読会を通過したという事実は、保守党管理の大勝利として歓迎された」。

第二読会は専門用語で、ご自分で辞書で確認してください。

 

第5文 It is not normal for a British government to suspend human-rights legislation, ignore international law or set Parliament in opposition to the judiciary, yet moderate Tory MPs cravenly go along with it.

これも先にnotがあることを忘れずに、orがnorと同じ意味になることを捉えないといけません。ちなみにAIの翻訳はこれをミスります。

「イギリス政府が、人権法律制定を中断することも、国際法を無視することも、議会を司法と対立させることもするのは、普通ではないが、穏健な保守党の下院議員は、臆病なことにも、それに賛成しているのである」。

 

第6文Britain needs stability.

「イギリスは安定性が必要である」。

 

第7文 The Rwanda row underlines that neither Mr Sunak nor the Tories can provide it.

the付きでルワンダという国自体ではなく、ルワンダ法案を指します。

「現在、ルワンダ法案は、スナク首相も保守党も、その法案を提供できないということを際立たせているのである」

 

 

ここで第1パラグラフは終了です。このパラグラフは、読み手の関心をひきつけると同時に、議論展開に必要な予備知識も与えるという導入(introduction)の役割に特化しているためにtopic sentenceを含まないと判断することができます。

ちなみに、第2文をtopic sentenceと見て、第3文から第7文までをそのsupportと見る可能性もあります。

しかし、結果的に、第2パラグラフ以降で、このパラグラフで言われたことをより詳しく、きちんと議論展開しているので、最初の解釈の方が良いと思われます。