「海辺のカフカ」 村上春樹 | 帰ってから思い出すこと

帰ってから思い出すこと

旅の話と本の話とロンドンの話…

クロアチアやイタリアやフランス、イギリスとヨーロッパを旅した時のことを中心に綴っています。
ロンドンで暮らしていた頃のことも書き残しておきたいな…と思いつつ。
旅の参考になれば幸いです。

お腹が空く度に思い出す。

カラスが僕に言った言葉


「与えられたものだけでやっていかなくちゃならないんだ。…そのうちに胃も小さくなっていくさ。」

「だって君は世界でいちばんタフな15歳のしょうねんなんだものな」



天気の良い午前中か知らない街に行った時に思い出す。

ひるがえるカーテン、開け放たれた窓。片隅で読む千夜一夜物語。


「開館したばかりの閲覧室には僕しかいない。

その優雅な部屋を僕はすっかりひとりじめすることができる。

雑誌の写真にあった通りだ。天井が高く、広くゆったりとして、しかも温かみがある。

開け放された窓からはときおりそよ風が入ってくる。白いカーテンが音もなくそよぐ。

風にはやはり海岸の匂いがする。ソファの掛け心地は文句のつけようがない。部屋の隅には古いアップライト・ピアノがあり、まるで誰か親しい人の家に遊びに来たような気持ちになる。」



何度も読みなおした。

凍えるほど寒い2月ロンドンの、暖かいベッドの上で。

私が春樹の中で一番好きな物語。