お腹が空く度に思い出す。
カラスが僕に言った言葉
「与えられたものだけでやっていかなくちゃならないんだ。…そのうちに胃も小さくなっていくさ。」
「だって君は世界でいちばんタフな15歳のしょうねんなんだものな」
天気の良い午前中か知らない街に行った時に思い出す。
ひるがえるカーテン、開け放たれた窓。片隅で読む千夜一夜物語。
「開館したばかりの閲覧室には僕しかいない。
その優雅な部屋を僕はすっかりひとりじめすることができる。
雑誌の写真にあった通りだ。天井が高く、広くゆったりとして、しかも温かみがある。
開け放された窓からはときおりそよ風が入ってくる。白いカーテンが音もなくそよぐ。
風にはやはり海岸の匂いがする。ソファの掛け心地は文句のつけようがない。部屋の隅には古いアップライト・ピアノがあり、まるで誰か親しい人の家に遊びに来たような気持ちになる。」
何度も読みなおした。
凍えるほど寒い2月ロンドンの、暖かいベッドの上で。
私が春樹の中で一番好きな物語。