きょうもまた、昼に夜にあれこれバッティングの土曜日。
ぼくは、その中でもまぁ多いであろう神奈川フィル⇒N響ルート。
どちらも大編成のオーケストラ芸術が堪能でき、お腹いっぱい、大満足のはしごとなりました。
神奈川フィル 定期演奏会(横浜みなとみらいホール)
指揮:沼尻竜典
ショスタコーヴィチ/交響曲第7番「レニングラード」
神奈フィルの「レニングラード」と言えば、川瀬賢太郎氏の指揮で名古屋フィルとの合同演奏による2015年の公演が思い出されます。
今日は神奈フィルだけでということですが、バンダー部隊などかなりの数のエキストラは入っていたことでしょう。
沼尻さんの指揮というか、音楽作りは、伸び伸びとしたもので、あまりオーケストラをキリキリと攻め立てる(そういう指揮者の方もけっこういますが)ことはなく、あくまでオケのメンバーの自主性を重んじている…ような気がします。
だからオーケストラの音は、硬くならず、大らかでよく響きます。
第1楽章、スネアドラムのリズムに乗って繰り返される「侵入のエピソード」での暴力的なまでの盛り上がりには震え上がりました。きょうの神奈川フィルの集中力は凄かった。
終楽章クライマックスでの圧倒的な盛り上がり、痛快な演奏でした。
そんなに多く神奈川フィルを聴いてきたわけではないですが、今まで聞いた中ではベストと言えるパフォーマンスだったと思います。
NHK交響楽団 定期演奏会(Aプログラム)NHKホール
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
リヒャルト・シュトラウス/「ヨゼフの伝説」から交響的断章
リヒャルト・シュトラウス/アルプス交響曲
神奈川フィルが14時開演で、「レニングラード」1曲のプログラムだったので、15時20分くらいには終演。余裕で18時開演のNHKホールへ。
神奈川フィルもそうでしたが、N響も満席かと思いきや、けっこう空席も目立ちました。東響やシティフィル、トッパンホールの公演など、客が割れたんですかね。それにこの雨と。
コンマスは、特別コンサートマスターになって初めての登場の篠崎マロ氏。となりに郷古氏と万全の布陣。
前半の「ヨゼフの伝説」は珍しい。
バレエ音楽というけど、ホルンは8本、パイプオルガンも加わるという巨大編成。交響的断章は作曲家自身が晩年20分強ほど抜粋したものと言いますが、これだけの編成のオケをバックに踊るダンサーも大変そう。というか、バレエとして舞台に上がることはあるのでしょうかね。
いかにもシュトラウスらしい、見事な管弦楽法を駆使した伸びやかな作品ですが、他の有名作品に比べると、どうにも散漫な印象がぬぐえない。ところどころハッとするような素晴らしい場面もあるのですが、まぁこんな作品もある…と言ったところでしょうか。
何といっても後半の「アルプス交響曲」。これは素晴らしかったです。パーヴォ/N響の名演は数多くあったかと思いますが、このアルプスは、後々まで語り草になる圧倒的な名演奏だったと思います。
夜、日の出から、森、小川、滝、牧草地…山頂、嵐、日没、夜…と、細かく場面が展開していくわけですが、それぞれの描きわけが秀逸。
(実際に見たことはないですが)アルプスの風景が次々と目の前に繰り広げられていくかのよう。
山頂での圧巻のカタルシスは、全身鳥肌が立ちました。石川さんのシンバルの一撃が見事!
さらにもう一つのピーク、嵐の場面での激しさ。ウインドマシンの操作は食い入るように見てしまいます(あんまり見すぎると耳がお留守になってしまうのでほどほどに)。
きょうのティンパニは、第1ティンパニが植松さん、第2ティンパニが久保さんと、珍しく首席2人がそろい踏み。壮絶なたたき合いをしてました。
感動的なのが、日没~余韻~夜と続く最終場面。日没を表現させたら天下一品のシュトラウス、きょうのパーヴォ/N響の演奏には深く心打たれました。
単なる登山の終わり、一日の終わりに留まらず、なにか人生の黄昏を感じさせるような、深い深い音楽に聞こえました。
本当に見事なアルプス交響曲で、神奈フィルのレニングラードも、前半のヨゼフの伝説も吹っ飛んでしまいました。