ヴェルディ/歌劇「ファルスタッフ」
指揮 コッラード・ロヴァーリス
演出 ジョナサン・ミラー
ファルスタッフ ニコラ・アライモ
フォード ホルヘ・エスピーノ
フォード夫人アリーチェ ロベルタ・マンテーニャ
ナンネッタ 三宅理恵
クイックリー夫人 マリアンナ・ピッツォラート
ページ夫人メグ 脇園 彩
管弦楽 東京交響楽団
「ファルスタッフ」、一昨年の東京二期会での公演、昨年のミョンフン/東京フィルの公演(演奏会形式)と好演が続きましたが、きょうのオペラパレスでの公演も素晴らしいものでした。
2004年プレミエのジョナサン・ミラー演出の舞台。ぼくはその2004年と2007年での公演を見ましたが、今回久しぶりでした(その間にも何回か上演されてましたかね)。
フェルメールの名画を意識した光と影を巧みに利用した美しい舞台で、壁の組み合わせの違いで場面を構成するので、転換もスムーズ。
きょうは何といったらよいか、特別感の無い、普段着の公演、といった感じで、歌手・オケ・合唱ともども、良い意味で手慣れており、イタリアのどこかの田舎の小さなオペラハウスの通常公演みたいな感じでもありました。
そういう意味では、幕が上がってからしばらくは物足りなさも感じましたが、曲が進むうちにじわじわっとこの傑作オペラの世界に取り込まれ、いい心地になっていくという、日曜の午後に聴く公演として理想的なものに思いました。
歌手の方々も全く穴がなく、題名役のアライモ以下、みなよく響く、良い声に浸ることができました。
今回は、アライモの他。アリーチェ役のマンテーニャ、クイックリー夫人役のピッツォラートの3名がイタリア人で、パレルモの劇場他、現地でそれぞれの役をやっていて、熟知していることも、きょうの公演の”普通さ”が際立った要因かもしれません。
ナンネッタ役の三宅さんは、一昨年の二期会での同役に続き、きょうも美しい高音を完璧に響かせていて、実に見事でした。
メグ役の脇園さんは、この作品ではちょっと地味な役でしたが、中々闊達な演技で盛り上げていました。
指揮のロヴァーリスは、イタリアオペラの職人指揮者で、新国では2019年の「ドン・パスクァーレ」でも素晴らしい音楽作りでしたが、きょうも良かったです。
振りは大げさなところは一つもなく、的確に拍子とキューを出すくらいの指揮ぶりですが、東響からこの作品に相応しい、明るいサウンドを引き出していました。
ミラー版「ファルスタッフ」、今回は全4公演で、残り2日(15・18日)とありますが、お勧めです。