NHK交響楽団 定期演奏会(Aプロ1日目)
指揮 : フィリップ・ジョルダン
ソプラノ : タマラ・ウィルソン
シューマン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」
ワーグナー/楽劇「神々のたそがれ」 ─「ジークフリートのラインの旅」 「ジークフリートの葬送行進曲」 「ブリュンヒルデの自己犠牲」
昨秋のウィーン国立歌劇場来日公演の「ばらの騎士」で見事な音楽を作り上げていたフィリップ・ジョルダンがN響初登場。5年間勤めたウィーン国立オペラを退任したからこそ呼ぶことができたのでしょうか。
後半の「神々のたそがれ」からの抜粋が圧倒的でした。
「神々のたそがれ」に練習のほとんどを費やしたのかと思うほど、前後半の落差がありました。
シューマンはよく言えば、きれいにまとめ上げた演奏、まぁ譜面をなぞっているだけのような演奏で、ジョルダンの指揮ぶりもどこか単調。
それより前半からセットされている7台のハープや、ホルンの後列にある椅子の並び(ワーグナーチューバ用)、それぞれのパート横に用意されている椅子などから、後半の巨大編成が期待され、早く「神々を聴きたい!」という気持ちが先行してしまいました。
で、後半期待の「神々のたそがれ」からの抜粋。それぞれの場面が切れ目なく演奏され、第3幕抜粋を聴くかのよう。演奏時間は40分弱。
7台のハープは圧巻でした。それにバス・トロンボーンん隣にはコントラバス・トロンボーン。黒金さんが吹いていました。ホルン5名の後ろには、持ち替えのワーグナー・チューバ4名。完全フルスペックです。
ここまでやるなら、第3幕だけでも全部やってもらっても良かったのではと。
「ジークフリートのラインの旅」冒頭からジョルダンの集中力が俄然違いました。長身で長い腕をフル活用して、濃密な音楽をN響の面々から引き出していきます。
N響の「神々のたそがれ」は東京春祭ヤノフスキ指揮での全曲公演が素晴らしかったですが、ヤノフスキはわりとあっさり目の速めのテンポでぐいぐい行ってました。ジョルダンはあせらずじっくりと音楽を構築していく様が見事でした。
音楽が大きく盛り上がっていく中での7台のハープは効果抜群。ライン川の泡粒が際限なく沸き立ってくるかのようでした。
「ジークフリートの葬送行進曲」は厚みのあるN響金管&打楽器群が見事でした。楽劇の場面が目に浮かぶようで、ちょっと感動してしまいました。
やはりジョルダンのワーグナーは素晴らしいです。名曲抜粋ながら完全に楽劇全体の中の一場面として音楽を作り上げていて、思わずのめり込んでしまいました。
静かに葬送行進曲が終わるところで、ソプラノのタマラ・ウィルソンが袖からそろりと登場。
まさにワーグナーに相応しいリリック・ドラマティック・ソプラノの声。ウィルソンはヴェルディとかイタリアオペラ中心だったところ近年ワーグナーにも取り組み成果を上げているとのこと。
「ニーベルングの指環」全体を締めくくる終曲含めて長丁場の「自己犠牲」。譜面台を置かず暗譜での歌唱は見事でした。
さすがに弱音部は、広いNHKホールで聴かせるのは無理がありましたが、伸びやかに強音は、絶叫にはならずあくまで美しかったです。
クライマックスに向けオケも熱を帯びて最高潮。感動的でした。
「神々のたそがれ」全部を聴いたというには大げさですが、十分に聴きごたえのある素晴らしい演奏でした。フランス国立管のシェフについたというジョルダンで忙しそうですが、またぜひ振りに来てもらいたいです。
