ここは伝研の病室だった。伝研の構内には、昼間でも狸が出るといわれる欝蒼たる大森林にとりまかれ、あちこちにポツンポツンと、ヒョロヒョロした建物が建っていた。今は、ましてや真夜中に近い時刻であるので、構内は湖の底に沈んだように静かで、霊魂のように夜気が窓硝子を透して室内に浸みこんでくるように思われた。
「では私の話をきいていただきましょう」帆村探偵はソッと別室の半開かれた扉を窺うようにしてから、おもむろに口を開いた。「射撃手事件は、並々の事件ではないのです。犯人は、飛行船を組立てるように、なにからなにまで周到の注意を払って事件を計画しました。そこにはうっかり通りかかるとひっかからずには居られない陥穽や、飛びこむと再び外へ出られないような泥沼を用意して置いたのです。ひっかかったものが不運なんです。私も貴方同様に手も足も出なくなるところでした、もし犯人が最後に演じた大きい失敗をのこして呉れなかったら。
第一から第三まで、三人の若い婦人の射殺は巧妙に遂げられました。三人の射たれた箇所は、完全に一致しています 。
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